増税が必要な理由
増税が必要な理由はいろいろと挙げられています。財源が不足しているとか、国民一人あたりの借金が700万円を超えているとか、今後も増大する社会保障費を捻出しなければならないとかいうのがその主な理由です。
では、なぜ財源が不足し、国民一人あたりの借金が増え続けているのかというと、それは効果のないところに税金を投入しているからです。
「補助金」とか「支援金」と呼ばれる支出がその典型です。かつて地域振興券という名称で2億円規模の補助金が支給されたことがありましたが、まるで効果がありませんでした。その後も手を変え品を変えてさまざまな補助金と支援金を支給する制度が設けられましたが景気はいっこうによくなっていません。
これだけお金を注ぎ込んでも、まったく効果が上がっていないのですから、いい加減やめたらどうかと思うのですが、政治家や官僚にはそういう気持ちはないようです。
失敗は誰にでもありますが、懲りずに失敗を繰り返す人をバカといいます。
これではまずいということがわかっていながら、直そうとしない人のことを無能あるいは怠け者と呼びます。(民間企業であれば、上司から罵詈讒謗を浴びせられることになります。)
ちっとも効果のあがらないことにいつまでもしがみつき、あまつさえもっと財源を寄越せというのですから、もはやつける薬はないといってよいでしょう。
歴史の本を見れば、戦前の軍部の無能無策と暴走があったという指摘とともに、マスコミもそれに荷担していたことが書かれています。後世の日本人からみれば、現代の政治家・官僚・マスコミが同じことをしていると映るのではないでしょうか。私たちには戦前の日本人を批判する資格はありません。
増税が必要な理由の2番目は、今の日本社会は、経済が永続的に成長拡大していくという前提で、あらゆる制度が設計されていることです。
そのもっともわかりやすい例が年金制度です。年金制度の問題点を語る際に必ずいわれることは、自分がこれまで払ってきた保険料と実際に受け取ることができる年金額の比較です。その根底にあるのは、自分が支払った保険料以上の年金を受け取るのがあたりまえだという意識です。
金を払えばリスクなしに必ずそれ以上の見返りがあるという制度を私たちは「ネズミ講」と呼んでいます。民間人が行えばネズミ講になりますが、同じことを国が行えば年金制度と呼ばれるのですから、世の中というのは不思議なものです。
ネズミ講が破綻しないための唯一の条件は、会員数が無限に増え続けることです。そんなことはあり得ないとすぐに気づくのですが、年金の場合はそうではありません。年金制度が破綻しないための条件は、経済成長という名のインフレがいつまでも続くことです。しかし、歴史上経済成長がいつまでも続いたという国はありません。まして日本の場合は人口の減少局面に入っており、生産活動に寄与しない高齢者が増え続けるということがわかっています。したがって、経済成長の持続を前提とした今の諸制度の見直しがただちに行われなければ破綻することは目に見えています。
時流がそのような方向に向かっているのですから、これに抗っても無駄であるといってよいでしょう。政府とマスコミが一生懸命になって雰囲気づくりを行っている消費税の増税は、肝硬変の患者に酒を飲ませて麻痺させるようなものであり、病の進行をわからなくするだけですから、近い将来さらなる増税が必要になることは間違いありません。