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カクレ理系のやぶにらみ

tamm.exblog.jp

時間のある方はお読みください。軽い気持ちで読み始めると頭が痛くなります。

テレビ用語におけるおかしな日本語

 バラエティ番組は他愛のないものが多いのですが、そこで使われているテレビ用語には、ときどき、おや? と思うものがあります。今回は2つばかり例をあげてみましょう。

1.われわれは○○を直撃した
 人に会って重要なことを聞き出すというシチュエーションで使われているようです。直撃という言葉は、爆弾や砲弾が命中すること、転じて「台風が本土を直撃した」といういい方が生まれました。
 これらの用法に共通するのは、それによって多大な損害(ダメージ)を与えたという意味です。この語感は今でも多くの日本人に共通するものであり、その仰々しさゆえにマスコミが好んで使うわけです。
 いっぽう、芸能レポーターが使う「直撃インタビュー」という言葉は、なかなか会ってもらえない相手に直接ぶつかるというイメージが元になっているように思います。もっとも、インタビューというのは直接会って聞き取りを行うという意味ですから、重箱を重ねるような用法であるといえるのですが、「直撃」という言葉のもつ仰々しさが視聴者の興味をひくということを計算しているのでしょう。
 先日、テレビを観ていたら、「われわれは○○を直撃した」とナレーターが述べた直後に、相手に電話をかけて聞き取りをしているシーンが放映されたのには笑ってしまいました。電話をかけて聞くことまで直撃というのかね。もっと難易度の高いインタビューならともかく、こんなことにまで直撃という言葉を使うようじゃ、そのうち「我々は下校途中の小学生を直撃した」などと大まじめでいうようになるのではないか? と思ったのです。
 こういういい方がテレビで横行するようでは、人にものを尋ねることを「直撃する」と勘違いするおっちょこちょいも登場するかもしれません。
 そういう使い方をする人が増えていけば、たとえ今は間違った用法であったとしても、将来は正しい使い方ということになり、国語辞典にも掲載されるようになります。それが悪いというわけではありません。言葉の意味はこういうふうにして変わっていくのですから。

2.われわれは○○に潜入した(あるいは「侵入した」)
 一般には公開されていない施設にテレビカメラが入る場合にこういういい方をしているようです。
 ただし、「潜入」とは黙って入り込むこと。また、「侵入」とは問答無用で入り込むことをいいます。ちゃんと取材許可をとって撮影しているはずですから、「潜入」とか「侵入」という言葉を用いるのはおかしいのですが、なぜか台本制作者はこういう言い回しが好きなようです。
 以前、「われわれは○○に侵入することに成功した」といいながら、向こうの職員が施設内を案内し、いろいろと説明していたのを見たときは爆笑しました。
 中学生にこういう番組のVTRを見せて、日本語としておかしいところはどこか? という教材にすると国語嫌いの生徒が減るかもしれません。
by T_am | 2011-01-03 23:05 | 言葉

by T_am