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カクレ理系のやぶにらみ

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時間のある方はお読みください。軽い気持ちで読み始めると頭が痛くなります。

ウィキリークスをめぐる日本のマスコミの報道姿勢

 今回もウィキリークスのことについて書いてみます。といっても、今回取り上げるのは主に日本のマスコミです。

 日本政府のウィキリークスへの対応は、コメントもしないし調査もしないというものです。つまり、無視するといっているわけであり、本心からそう思っているのであれば、貴重な情報を前にしてずいぶんもったいない話だと思います。忌憚のないことをいえば、怖いものは見たくないとばかりに、座り込んで目をつぶり耳を塞いでいるこどものような態度だといってもよいでしょう。さらには、そういう機密情報を「暴露」する方が悪いと非難しているのですから、こういう現実感覚のない人たちが日本を率いていていいのか、とも思ってしまいます。もっとも、そのことは尖閣諸島沖での中国漁船の衝突の模様を記録した海保のビデオを非公開と決めたことでわかっていたことなのですが・・・

 マスコミも尖閣ビデオの映像がネット上に流出したときには、犯人捜しというムードを煽ることに熱心でした。さらには、レアアースの中国の輸出がストップしているという「事実」を時折報道したこともあって、事件の本質がうやむやになってしまった感があります。

 今回のウィキリークスの「暴露」事件でも日本のマスコミの報道姿勢は尖閣ビデオのときとよく似ているといえます。ネットで公開された情報の中身をきちんと伝えるわけでなく、伝えられるのは品のないゴシップ的なものばかりですから、ウィキリークスに掲載されている情報というのはそういうものばかりだというイメージを植え付けようとしているのではないかと疑ってしまいます。
 ウィキリークスに掲載されている文書をきちんと検証して、これは日本にとっても重要だと思えば積極的に取り上げてもいいのではないかと思うのですが、そういう動きは今のところ見当たりません。
 どうやら日本におけるマスコミの判断基準というのは、ニュースとして取り上げるのは自社にとって価値のある情報かどうかということであって、国民にとって価値のある情報かどうかということはまったく考慮されないのだと考えて差し支えないようです。

 一連の報道の中で注目すべき点は、ウィキリークスが掲載している情報(その中には各国もメディアが事前に情報提供されて、独自の調査と判断に基づいて掲載したものも含まれています)について報道されているものは極めてわずかであるということ。および、内部告発者から提供された情報をネット上に公開するというウィキリークスの仕組みについての論評が一切ないこと。この2つです。
 その代わり伝えられるのは、ウィキリークスの創設者はどんな人間であるか(現在はICPOによって強姦容疑で国際手配されている)というものであるか、または、ウィキリークスがサイバー攻撃にあっているというものであったり、アメリカ政府が対応に追われているという内容のものばかりです。
 これらを要約すると、日本のマスコミはウィキリークスの事件をゴシップ記事で埋め尽くそうとしている、ということになります。まさに、「出る杭は打たれる」という諺の実物見本を示されているようで、いささか情けない思いを感じています。

 片方には、正義感に燃えた内部告発者が存在し、もう片方には国民が存在しています。その間を仲介するのがウィキリークスであって、その点ではマスコミが果たす役割と何ら変わりはありません。にもかかわらず、日本のマスコミがウィキリークスに冷淡なのは、異母弟に辛くあたる長男を見ているようです。もっとも長男にすれば、やたら行動力があってしかも目立つ異母亭を苦々しく思えるのかもしれません。だからどうでもいいことで異母弟の悪口を言いふらすのではないかと思うのです。

 そういえば外務省機密漏洩事件(1972年)のときも、いつの間にか機密情報を入手した手段の非倫理性ばかりが論じられるようになり、肝心の密約そのものは忘れ去られてしまっていました。(どんな事件だったのか知りたい人はWikipediaを参照してください。すぐ見つけられます。)40年も前の事件ですが、それ以降マスコミは何一つ進歩していないということがわかります。

 その情報は国民にとって価値のあるものなのかという視点がぶれなければ、このような本末転倒の状況はおこらないはずです。にもかかわらず、40年前と同じ(性的スキャンダルに矮小化しようとするところも同じ)ように、事の本質を無視した扱いがされているのは、マスコミの報道基準がずれているからだという結論に達するのです。


付記
 外務省機密漏洩事件のときも、情報の流出源がどこかという犯人捜しが政府内で徹底的に行われました。尖閣ビデオの流出事件でもそうでしたが、変わっていないのは政治家も同じであるといってよいでしょう。
by T_am | 2010-12-04 00:31 | その他