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カクレ理系のやぶにらみ

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時間のある方はお読みください。軽い気持ちで読み始めると頭が痛くなります。

北朝鮮の計算

 韓国領土の延坪島に対し北朝鮮が砲撃を加え民間人の死傷者が出た事件で、なぜ北朝鮮がこんなことをしたのかについて、様々な憶測が流れていますが、実際のところはわかりません。
 そんな中で28日に予定されている黄海でも米韓合同軍事演習の際に、北朝鮮が次の挑発行為を行うのではないか? それによって朝鮮半島の緊張がさらに高まるのではないか? という懸念も広まっているようです。
 
 今回述べることは全くの憶測であり、根拠も何もないので、そのつもりでお読みいただきたいのですが、どうも北朝鮮は韓国とアメリカに対し、チキンレースを仕掛けているように思えてなりません。
 チキンレースというのは、波止場で車が2台同時に岸壁に向かって全速力で突っ込んでいくというものです。お互いの度胸を競い合うのが目的ですから先にブレーキを踏んだアクセルを離した方が負けになります。とはいうものの、全速力で走っていくわけですから、ぎりぎりまで我慢して勝負に勝ったとしても、今度は止まりきれずに岸壁から海に転落するという危険性も残ります。
 朝鮮半島の動向をみていると、北朝鮮が韓国に対しチキンレースをしかけており、韓国は常に負け続けているように思えます。チキンレースの先にあるのは朝鮮戦争という事態ですが、韓国は北朝鮮相手に戦争になるのは避けたいと考えていることは傍で見ていてもよくわかります。
 北朝鮮もそのことは充分心得ているので、瀬戸際外交(危機を煽って相手から譲歩を引き出す)を過去に何度も行ってきました。瀬戸際外交の危うさは、前回と同じ程度の危機を煽っても受け手の側も慣れてくるので、期待したほどの効果をあげられない恐れがあることです。そのため、瀬戸際外交はよりエスカレートするという宿命を抱えており、実際に北朝鮮がアメリカや韓国の譲歩が足りないと判断すれば、従来よりもエスカレートした手段に訴え、相手を交渉のテーブルに着かせるというのが北朝鮮の戦略でした。
 現状では、六カ国協議は中断されたままですし、韓国の大統領が替わって北朝鮮に対する政策が変更されてからは南北間の対話も途絶えたままとなっていますから、北朝鮮が今までにない危機感を煽る可能性が高まっていると考えられます。

 両国間のチキンレースは、戦争突入の1歩手前までエスカレートしていくことでしょうが、そこまで行き着いてしまうと今度は次の打つ手がなくなるわけですから、このような外交方針を続けることは冷静に考えれば賢明であるとはいえません。
 北朝鮮で脱北者が相変わらず発生しているというのは、政府に対して不満を持っている人たちが国内に相当数いるということを教えてくれています。これまでの政治の失敗によって食料も満足に自給できない国に成り果てていながら、先軍政治を掲げているというのは国内の不満を抑えつける手段が他にないからであると想像されます。
 
 無能な政治家が国民の不満をそらすためにナショナリズムを刺激するというのは別に北朝鮮に限ったことではありません。最近では911のときのジョージ・ブッシュがそうでした。
 ナショナリズムを刺激するためには仮想敵国を国民の前に具体化することが必要です。一度そういう状態に陥ると、国民は自国と敵国とのゼロサムゲームに熱中するようになります。国民は、自国の得点と敵国の失点には喝采を叫びますが、反面自国政府の失策には容赦ない批判が浴びせられます。その批判を封じ込めるためにも強力な軍隊を維持することが必要になるのです。

 北朝鮮による挑発行為はこれからもエスカレートする一方であると考えないわけにいきません。
 北朝鮮の国営放送では、28日に予定されている米韓合同軍事演習が北朝鮮に対する敵対行為であり、北朝鮮はそれに断固として鉄槌を下すのだという勇ましい報道がされています。そうすると、28日の米韓軍事演習が無事に終わるとはとても考えられないのであり、再び何か事件が起こるだろうと予想されます。もしかすると北朝鮮では水面下で中国と密かに協議を進めているかもしれません。その目的はただ一つ、今度の米韓軍事演習で北朝鮮はここまでやるが中国は敵対しないでもらいたい、という要請に同意を取り付けることです。
 その同意の取付けに成功すれば、それなりの事件が起こるものと思われます。逆に中国の同意を取付けることができなかったときはどうなるかというと、はるかに軽微な事件が起こるものと思われます。北朝鮮にすれば、国民に不満を持たせるわけにもいかないのですが、そうかといって中国の支持を失うわけにもいかないからです。

 日本はどうしたらいいかというと、直接の当事者ではないのですが、情報収集に全力をあげるという指示しかできないのであれば、それは政治家としての無能不適格を意味します。そもそも情報収集というのは普段から行っておくべきことなのであって、そうやって集めた情報に基づいて、こういう局面になったら日本としてどのような行動をとることがベストか、ということを研究しておくということをやっておかなければなりません。
 その点、日本は平和ぼけしているせいか、著しく怠惰であると申せましょう。そういう鈍感さも北朝鮮による瀬戸際外交をエスカレートさせてきた一因となっていることを理解して方がよいと思います。
 政治にも外交にも、これが唯一の正解というものは存在しませんが、消去法の結果これが現時点では最良の策であるというものは必ずあります。
 日米間が連携して北朝鮮に対し経済制裁を実施しても中国が支援すれば、その効果は半減してしまいます。ゆえに、今求められることは、中国による北朝鮮への肩入れをやめさせることであると考えた方がいいでしょう。
 中国に面と向かって、北朝鮮に対する支援を自粛してもらいたいと伝えることは、手続き上不可欠でしょうが、それしかできないというのではこどもの使いと一緒です。
 何が中国にとって効果的であるかという視点からは、中国は自らの威信に傷がつくことを嫌うと考えられるので、「なんだかんだいっても中国は北朝鮮に対してそれほど影響力を持たないのではないか」という雰囲気を中国周辺国の間でつくりあげることが有効であると思います。中国も周辺国との間に摩擦がないわけではないので、それらの国から軽視されるようなことはさけなければなりません。それに、そうなれば国内の不満分子が騒ぎ出すことになります。

 だとすれば、それを利用しないというという手はありません。

 計算しながら外交戦略を練るという点では日本は北朝鮮を見倣うべきなのかもしれません。
by T_am | 2010-11-27 07:54 | その他