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カクレ理系のやぶにらみ

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時間のある方はお読みください。軽い気持ちで読み始めると頭が痛くなります。

現場の反乱

 尖閣沖での中国漁船が海上保安庁の巡視船にぶつかってきたビデオの映像がYouTubeにアップロードされたことで、マスコミの関心は「誰が」「どんな目的で」映像をアップしたのかということに集中しているようです。
 さらに11月5日はJR川口駅東口の連絡通路に同じ映像が記録されたDVDが280枚入った段ボール箱が置かれており、「尖閣問題のビデオです。ご自由にお取りください」と記されたA4の紙が貼られていたとのことです。
 1人で280枚ものDVDにファイルを焼き付けるのは、それにかかる手間と時間を考えると、よほどの強い意志(執念)がないとできるものではありません。それゆえ、単独犯ではなく数人が関与しているのではないかと思われます。

 しかし、このような「犯人捜し」はあまり意味がないと思います。

 以下は、海上保安庁の関係者による映像流出という前提で書くのですが、そうだとするとその意図は「首相官邸に対する抗議」であると考えるのがもっとも自然であると思います。
 中国漁船の船長が処分保留のまま釈放されてしまっているのですから、今更この映像が公開されても、中国に対するカードにはならないのですから、あまり意味はないといえます。
 形式上、船長の釈放を決めたのは那覇地検ですが、そう思っている人はよほどのお人好しでしょう。むしろ首相官邸による介入があったと思っている人が多いのですから、この時点で映像を公開し、漁船の行動の違法性が白日の下に晒されれば、釈放を容認した官邸に批判が集中するはずだと読んだのだと思います。

 今日のNHKニュースによれば内閣支持率はさらに低下し、31%にまでなったとのことですから、犯人の目的は達成されたと思ってよいと思います。
 しかし、ニュースで取り上げられるのは、自民党による「政府の情報管理の杜撰さ」というものであり、また、「犯人は誰だ」というものばかりです。あいにくとそのような視点でこの事件を理解しようとすると、将来も同じような事件が起こることになると思われます。
 犯人の動機は、それこそ命をかけて職務を遂行している現場を無視して顧みようとしない政府首脳とそのいいなりになっている高官たちに対する失望・不信・抗議であると考えられます。それがモラルハザードを引き起こし、国家公務員による機密の漏洩という事件の原因となったといえます。
 ですから、仙石官房長官が、「現在の罰則では抑止力が十分でない問題を抱えている。秘密保全に関する法制のあり方について早急に検討をしたい」と述べても説得力を持たないのです。

 それよりもあなたがお辞めになった方が再発防止によほど効果があるのではないですか? そんなことを考えてしまいます。

 ロシアのメドベージェフ大統領が北方領土を訪問したことといい、領土問題というのは結局実力行使した方が勝つということをつくづく感じました。 
 大統領の訪問は、北方領土の人口減少に歯止めをかけたいということが主目的のようです。そもそもロシアの大統領が北方領土を訪問するということは以前からわかっていたことであるにもかかわらず、日本政府がロシア政府に対して警告したという話は伝わってきませんでした。
 北方領土問題は、実力行使によって実効支配されたらもう取り返しがつかないということを教えてくれています。同じ恐れは竹島にもありますし、尖閣諸島にもあります。そこで、相手国が実力行使というカードを切れないように普段から工作しておくのが外交の役割です。それは特に難しいことではなく、相手国を取り囲む国々と緊密な関係を築き上げておくということです。敵の敵は味方であるという発想に立てば、日本の外交は何をしなければならないかがわかるはずです。少なくとも、捨てるほどワインを買い込むだけの暇があるというのは、各国にある大使館は何をしているのかと疑問に思います。
 もっとも、大使館員の重要な仕事は外遊した国会議員のお世話だということになっている限り、いい仕事は期待できないかもしれません。かつては日本にいる後援会員宛に絵はがきの宛名書きを手伝わされた大使館員もいるということですから、政治家の意識の低さも問題とすべきでしょう。

 今回の映像流出事件は、そのような政治家たちに対する現場の反乱という意味合いがあるように思います。
 にもかかわらず、国会の場で自民党が政府の管理責任を追及するしかできないというのは、この政党にも外交センスを持った政治家がいなかった(その延長が現在の体たらくです)ということの証明にほかなりません。
 むしろ、政府の失政を追及すれば中国から睨まれかねないのですから、そうなれば政権党に復帰した祭に禍根を残すとでも計算しているように思えます。そういう打算は事なかれ主義と無責任体質に結びついているのであり、その点では与野党大差ないと考えてよいと思います。
 
追記
 埼玉県で小学生の女の子が自殺をした事件で、校長の記者会見の様子が伝えられているのをみると、このような無責任体質がこの国を広く覆っていることがわかります。自分の職務に対して使命感も責任感もない人物の方がかえって出世していくという社会は相当病んでいるといってよいでしょう。
by T_am | 2010-11-08 23:45 | その他