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カクレ理系のやぶにらみ

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時間のある方はお読みください。軽い気持ちで読み始めると頭が痛くなります。

変な日本語  「生きもの会議」


 生きもの会議、世界目標採択めざし本会合開幕 名古屋

 これは朝日新聞の見出し(10月18日付)です。はて、名古屋で開かれる国際会議の名称は「生物多様性条約第10回締約国会議」というのではなかったのか? こう思ったのでネットで調べてみたところ、「国連地球生きもの会議」というのが通称であり、朝日新聞の見出しはそれをさらに簡略化したものであることがわかりました。
 
 それにしてもひどいネーミングですね。こういうときの名前のつけ方は、それで中身がどんなものかだいたい想像がつくようなものにするというのが原則ですが、「国連地球生きもの会議」と聞いて何の会議なのかわかる人はそういないのではないでしょうか? 私はワシントン条約(絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約)のことかと思ってしまいました。
 この変な通称の出所はどうやら環境省のようです。平成22年1月19日付の報道発表資料にこの通称が載っています。

http://www.env.go.jp/press/press.php?serial=12013

 なお、このサイトには「地球いきもの応援団」という組織があることも触れられているのですが、「生きもの」と「いきもの」という用語があって、どういう意図で使い分けしてているのかが私にはわかりません。言葉に対するこのような鈍さというか無神経さはこの官庁の伝統というべきであり、広告代理店か企画屋といわれる人たちがバックについているのではないかと密かに疑っています。(もっとまともなことに税金を使ってくれよな。)
 そういえば、このサイトには「MY行動宣言式」という言葉もありましたから、ここまで来ると、もうビョーキというほかありません。

 それでもこのサイトを読んでわかったのは、生物多様性条約には次の3つの目的があるということで、これは収穫でした。

(1)生物の多様性の保全
(2)生物多様性の構成要素の持続可能な利用
(3)遺伝資源の利用から生ずる利益の公正で衡平な配分

 NHKがやっている在来種を絶滅の危機から救いましょうというのはこの(1)に基づくものであり、人の情に訴えるところがあって、もっとも受け入れられやすいと思います。
 また、(2)は、たとえば乱獲によって漁獲量が減ってきているマグロなどを思い浮かべればどんなことが議題となるのかがだいたい想像がつきます。(3)は主に薬品業界とその知的所有権の問題なのでしょう。
 これらの問題は、地球温暖化対策がそうであるように、政治問題でありかつ経済問題でもあります。一言でいってしまえば、「人間の都合のいいように自然から略奪するルールを決めていきましょう」というものです。自然を略奪の対象とみなすのは欧米人に特有の考え方であり、私たちがそれにつきあう必要はないと思うのですが、世界第二位の経済大国(もうすぐ第三位に転落しそうですが)としては、「俺も混ぜてくれ」といわないわけにはいかないのでしょう。
 この条約には2つの側面があって、絶滅種を救うという感傷的な面と生物資源は金になるというシビアでハードな面です。
 ところが環境省が「国連地球生きもの会議」という意味不明の通称をつけたことによって、センチメンタルな側面ばかりが強調されることになってしまいました。新聞やテレビで行われているキャンペーン報道はこの視点に立っています。極めつけは朝日新聞による「生きもの会議」というネーミングです。おかげで「遺伝資源の利用について先進国と途上国との間の対立が深い」などという会議内容が報道されると、いったい何の会議なのだ、と不思議に思うということになってしまいました。なぜかというと、遺伝資源(ここではウィルスのこと)は「生きもの」ではないからです。そういえば、「生きもの」といった場合、主に動物を指し、植物は含めないことが多いので、この点でも「生きもの会議」というネーミングは妥当性を欠いているといえます。

 それよりもこの言葉からは、初対面の人間から「ねえねえ、お兄さん。いい話があるんだけど、ちょといいかしら?」と馴れ馴れしく手を握られたような気持ちの悪さを感じてしまいます。

 もしかすると、生物資源は経済問題であることが明らかになってしまうと、環境省はおよびでないということになるのを恐れたのかもしれません。この会議の議長は環境大臣が務めるようですから、なおのこと他の省庁の介入を阻みたかったのかもしれません。
 そうだとしても、「もうすこしまともなことに税金を使ったらどうなのかね。」といいたくなるのです。
by T_am | 2010-10-18 22:17 | その他