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カクレ理系のやぶにらみ

tamm.exblog.jp

時間のある方はお読みください。軽い気持ちで読み始めると頭が痛くなります。

分杭峠のパワースポット

 この前の日曜日、長野県伊那市にある分杭峠に行ってきました。中央構造線という相反する磁界を持った地層がぶつかり合うがゆえに、見かけ上エネルギーがゼロになっているけれども実際は2つの強い力が加わっている「ゼロ磁場」といわれるところなのだそうです。パワースポットという言葉は、大地のエネルギーが湧き出ているところという意味のようで、分杭峠のパワースポットということでテレビでも取り上げられたこともあって大勢の人が訪れていました。
 分杭峠までの国道152号線は幅員が狭く、峠には駐車場としての充分なスペースがないにもかかわらず大勢のマイカーが訪れて交通渋滞がひどくなったために、現在は分杭峠の駐車場は一般車両の駐車は禁止されています。このため分杭峠を訪れるには、高遠市街寄りの麓に設けられている専用駐車場(無料)に車をおいて峠までシャトルバスで往復することになります。
 分杭峠には気場と呼ばれるところと水場と呼ばれるところがあり、どちらへ行くにしてもシャトルバスの降車場からちょっとだけ歩かなければなりません。気場の方は急斜面に腰掛けるための角材が何列も埋め込まれており、上の方へ行くためには張ってあるロープにつかまりながら昇っていくことになります。結構な急斜面ですから、雨が降ったときのぬかるみは相当なものがありそうです。
 気場にはちょっと変わった看板が掛けられており、それは「最近、気功師でもなく整体師でもないのに、女性の体にふれようとする男が出没することがあるので気をつけてください」という内容のもので、これを読んだときは思わず笑ってしまいました。
 分杭峠を訪れた人は、最初に気場へ行き(手すりのある坂道を下っていく)、そこでしばらく座って全身に気を浴びた後で水場の方に向かうというコースを辿るようです。水場は、降車場の上にある「これより北高遠領」と書かれた石碑の左側にある砂利道(林道)を歩いていくとあります。そこには沢が流れており、パイプから水がちょろちょろと湧き出ているところもあって、ポリタンクを持参した人はそこで水を汲んでいます。このため水を汲むための行列ができることもあります。
 水場でも人が腰掛けられるようになっており、気場と同じようにリラックスしながら座っていると大地が発する気を取り入れることができると考えられているようです。同行した家人は、ずっと肩こりに悩んでいたのですが、ここへ来て肩こりが楽になったと喜んでいました。
 私はといえば、気を感じる能力がないことが再確認された次第です。しかしながら、気を感じることができないからといって気は存在しないのだと断言するのもどうかと思います。人間は紫外線や赤外線を見ることができませんが、それらはちゃんと存在するように、人間が観測することはできないけれどもちゃんと存在しているという場合もあるのです。ただし、それらはちゃんと存在しているということが立証されなければならないので、私にはゼロ磁場やパワースポットが確かに存在しているかどうかはわからないとしか申し上げることができません。(家人の肩こりが楽になったというのも、単なるプラシーボ効果にすぎないのかもしれません。実際のところはどうなのかわかりませんが。)

分杭峠に関する伊那市のサイト


 ちなみに、ゼロ磁場ということで、iPhoneのコンパスを眺めながらその辺を歩いてみましたが、コンパスは正常に磁北を指していました。ゼロ磁場だからコンパスも狂うだろうというのは私の早とちりで、地球には地磁気があるのですから、コンパスは北を指すのは当たり前です。それが狂うというのは、近くに強い磁気を帯びた物質があるからで、そうだとするとそれはゼロ磁場とはいいません。相反する磁力が衝突して互いに打ち消し合っているのがゼロ磁場なのですから、コンパスが干渉されることはないのです。
 気場で私の他にもコンパスを持った男の人がいて、地元の人らしき人がその人に向かって小石を渡し、コンパスの下に置いたところ針がくるくる回っているのがみえました。どうやら気場には弱いながらも磁力を持った物質があちこちにあるようです。だから、たまたまそういう物質の間に入り込んだときにコンパスの針がくるくる回るようになるというものなのでしょう。

 分杭峠に滞在すること1時間ちょっと。あまり長い間いるのはかえってよくないようなので、シャトルバスで麓に戻り、そのまま152号線を茅野市の方に向かいました。途中、杖突峠で高遠そば(蕎麦つゆに味噌をとかして食べる、いかにも山国らしい食べ物でした。)を食べてから、諏訪大社のうち下諏訪町にある下社秋宮に詣でた後で、すぐ前にある諏訪湖オルゴール博物館奏鳴館に寄りました。

奏鳴館のサイト


 オルゴールといえば、シリンダーがゼンマイ仕掛けで回転するものとばかり思っていましたが、アンティークなディスクオルゴール(ディスクを交換して違う曲を演奏することもできる)やパンチカード式のオルゴール(オルガニート)、さらにはストリートオルガンも展示されており、機械好きにはたまらない場所です。
 毎時30分にはアンティークなディスクオルゴールの演奏が行われ、それはきれいな音色を奏でていました。そのすぐ後で手回し式のストリートオルガンの体験演奏(入館者が順番にハンドルを回す)も行われます。ハンドルを回す早さによって曲のテンポも速くなったり遅くなったりするので、ストリートオルガンの演奏というのはけっこう難しいことが実感できました。

 ここの展示室の圧巻は若月まり子さん制作のジオラマ「夏の夜の夢」が回転式のオルゴールとして展示されていることです(巨大なガラスケースの内側に展示されているので曲を聴くことはできない)。この人のつくる妖精の人形には独特の存在感が漂っており、眺めていると思わずため息がもれてしまいます。

若月まり子さんのオフィシャルサイト



 自動車で朝の7時頃に新潟を出て、戻ってきたのは夜の9時過ぎでした。往復延べ690kmかかり、帰ってから猛烈な睡魔に襲われてそのままぐっすり朝まで寝てしまいました。
 いったいリフレッシュしに行ったのか、それとも疲れに行ったのかよくわからない一日でしたが、充実した一日であったことは間違いありません。


付記
 気場の急斜面はとても滑りやすくなっています。私が行ったときは、ヒールの高い靴を履いた女の人が来ていましたが、あの靴であの急斜面をどうやって登り降りしたのだろうと不思議でなりませんでした。また、ぺったんこのサンダルを履いた女の人、ビーチサンダルを履いたおじさんもいました。普通なら滑って歩けないだろうと思うのですが、パワースポットは超人的な力を授けてくれるのかもしれません。
 そういえば、ヒールの高い靴を履いた若い女の子は、20リットルのでかいポリ缶をキャリーカートに載せて引いていました。その姿から都会でキャリーケースを引いて歩いている女の子を連想したのですが、8割方水の入ったでかいポリ缶を載せたキャリーカートを苦もなく引いて砂利道(ゆるい上り勾配となっている)を帰って行く様はとても人間業とは思えず、何とも場違いでありました。
 パワースポットとは不思議なところですね。
by T_am | 2010-10-05 00:34 | 科学もどき

by T_am