ブログトップ

カクレ理系のやぶにらみ

tamm.exblog.jp

時間のある方はお読みください。軽い気持ちで読み始めると頭が痛くなります。

弱者連合

 尖閣諸島の漁船衝突事件で中国人船長を釈放したら、中国政府は日本に対し「謝罪と賠償」を求めてきました。中国政府はこの事件が起きた直後から日本に対し即時釈放を要求し、さらには政府間協議の延期、中国人観光客の来日キャンセル、SMAPの中国公演延期、レアアースの対日輸出手続きの遅延、日本人の拘留など矢継ぎ早に手を打って来ました。日本経済に占める中国の位置は大きなものがあるだけに、政府は今後の日中貿易に与える影響を懸念して、船長を釈放することで事態の収拾を図るつもりだったのでしょうが、思惑が外れた格好になってしまいました。
 中国がここまで強硬姿勢に出るのは、反日感情という世論があること、および政権交代(胡錦濤から習金平へ)を控えている中で、政府高官内でポスト争いが起こることは確実ですから、このタイミングで親日的なポーズを見せることは自己の利益にならないという打算も働いているのだという観測もあります。(今朝の新聞から)
 中国政府内にそのような事情があるのであれば、もっと早く報道してくれていればいいのにと思うのですが、新聞もテレビも出来事を報道するのに精一杯で、それが意味するものを分析する余裕(もしくは能力)がないのでしょう。

 今回のことで改めてわかったのは、双方の利害が対立して争いが起こったときは、国際社会では結局力の強い方が勝つという単純な真理です。力が強いというのはまず第一に軍事力の裏付けがあること。ただし、安易に戦争をしかけるわけにはいきませんから、それ以外の分野で「自分の優位性を築く」ように普段から持っていくことが二番目に必要となります。こういうのも国家戦略であり、国内問題だけを扱うのが国家戦略ではありません。
 中国の持つ潜在的なパワーというのは日本とは桁違いに大きいといえます。広い国土と豊富な資源、日本の十倍の人口。どれをとっても日本がかなうものではありません。そのような状況で日本の優位性を確保する手段として、とりあえず2つのことが考えれると思います。

 ひとつには、ASEAN諸国との関係を深めていくというものです。日本では尖閣諸島ばかりが話題となっていますが、中国は南シナ海でベトナム、シンガポール、マレーシア、インドネシアとの間で領有問題を起こしているという事実はほとんど報道されていません。(ベトナムの漁船が領海を侵犯したと行っては拿捕している)
 今朝の新聞で、アメリカとASEAN首脳会議で「南シナ海を含む紛争の平和的解決でアメリカとASEAN首脳が一致」したと報じられていました。これらの国が個別で中国と交渉しても相手にならないのはよくわかっていることですから、利害関係が一致する国が団結して中国包囲網を築いていくという戦略があって、そこにアメリカを巻き込もうとしたものです。しかしながら、オバマ政権の関心は国内の雇用・経済情勢であり、アジアに対する関与は経済問題の一環という部分に限定したいようです。このあたり、絶えず「次の選挙」を気にしなければならず長期的な視野に立って戦略の立案がしづらいという民主主義体制の限界があらわれていると思います。普段からきちんと情報を国民に提供し、合意形成をはかる努力をしていればいいのですが、アメリカという国ではそのようなことが行われたことは過去に一度もないのではないかと思います(911のときは国民感情を煽るというやり方であり、理性に訴えるというものではありませんでした)。もっともこのことは日本もあまり変わらないと思いますが・・・
 領有権問題では日本もASEANと歩調を合わせて中国と交渉していくことを考えるべきでしょう。その際に憲法は集団的自衛権を否定しているという見解が足かせになります。これをASEAN諸国に対して認めれば中国に対する大きな圧力となります。そのうえで日米安保条約を見直して東アジア全体の安全保障という姿に持っていくことも視野に入れるべきだと思います。日本列島は東シナ海に蓋をするように展開しているという地理的優位性を最大限に利用するということを考えて今後の戦略を練ることが肝要です。

 二番目の優位性は、日本が持つ技術です。中国は急速な経済発展を遂げているので、そのひずみがいろいろなところであらわれてきています。それらが大きな問題にならないのは、経済成長の恩恵の方が今のところ大きいからなのですが、そのような状態がいつまでも続くはずがありません。少しずつ体質を転換しようとしているとはいえ、中国の経済成長を支えているのは相変わらず低賃金労働です。既に兆候が現れているように、労働者による待遇改善の要求は今後ますます激しくなっていきます。賃金が上がると経済成長にブレーキをかけることになり、それは労働者の待遇改善が停滞するということに結びつきます。そうなったときに、それまでのひずみが一気に吹き出すことになるはずです。
 日本でも高度成長に伴って各地で公害問題を起こしましたが、現在それらは技術的に解決されており、新たな公害が発生しているということはありません。
 今後中国が必要とするのは環境を保護するための技術になっていくと予想されますが、この分野では日本の方がはるかに進んでいます。その技術を日本の優位性を確保するために活用していったらよいと思うのです。

 日本人というのはお人好しなところがあって、自分が善意を持って行動すれば相手もそれに応えてくれるだろうと期待してしまうところがあります。結果論となりますが、今回の船長釈放もそういう期待が働いたように思われます。同一の文化・習慣を持つ間柄であればそのような期待も有効でしょうが、国際社会ではそういうわけにはいきません。
自分の物差しで相手の行動を予測(というよりは期待)するというのは無意味です。
 ですから外国に技術を持ち込む場合、肝心要の部分は渡さないということも必要だと思うのです。
by T_am | 2010-09-26 12:22 | その他