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カクレ理系のやぶにらみ

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時間のある方はお読みください。軽い気持ちで読み始めると頭が痛くなります。

法は人が運用する

 那覇地検が、沖縄・尖閣諸島沖での中国漁船衝突事件で逮捕した中国人船長の釈放を決めました。そもそもの逮捕容疑は、この漁船が海上保安庁の巡視船に対し、故意に衝突してきたという公務執行妨害です。
 ここでこの事件を整理してみましょう。

 領海侵犯をした船舶に対し、海上保安庁は停船を命じ、船舶に乗り移って臨検を行い、船籍・目的地・航行の目的・積荷・無通報の理由などを聴取し、場合によっては逮捕することがあります。今回の中国漁船は停船命令を無視したばかりでなく、巡視船に対し故意に衝突してきました。巡視船が停船を命じたにもかかわらずこれを無視して逃走しようとした場合、巡視船は威嚇射撃をすることで強制的に停船させるようにします。これが普通のやり方ですが、今回の場合、そうなる前に漁船が巡視船に衝突してきたわけですから、公務執行妨害で船長が逮捕されのは当然の成り行きであるといえます。ることはなかったと考えられるのです。
 ところで、これが日本の領海内ではなく日本のEEZ内や公海上であればどうなっていたでしょうか。EEZ内であれば漁業法に基づいて立ち入り検査を行うことができます(拒否した場合は停船を命じることができる)が、公海上ではそれもできません。

 したがって、中国漁船衝突事件で海上保安部が国内法に基づいて船長を逮捕したということはこの海域が日本の領海内であるということを世界に向けて宣言するのと同じですから、中国政府としてはこの船長の逮捕そのものを絶対に容認するわけにはいかないという事情があったのです。そこで中国政府が日本に向けて様々な圧力をかけてきたことは連日のニュースで皆様よくご存知のはずです。
 
 その結果、本日、那覇地検は「計画性は認められず、日本国内での前科もない。加えて日本の国民への影響や今後の日中関係を考慮」した結果、処分保留で釈放するという発表を行いました。決定にあたり、那覇地検では福岡高検や最高検と協議したとのことです。、処分保留というのは起訴しても有罪に持ち込むだけの材料がない場合に行われるものであり、巡視船に別段の被害もなくまた乗組員にけが人もいなかったことから、さほど重大な事件であるとはみなされないという判断が働いたものと思われます。もっとはっきりいえば、たいした犯罪でもないのに起訴に持ち込んでも、日中関係に与える影響の大きさを考えるととても割に合わないと考えたのでしょう。有罪判決を勝ち取ってもたいして評価されるわけでもなく、逆に騒ぎが大きくなれば責任を取らされるという心配をしたものと思われます。

 大阪地検特捜部の主任検事が逮捕された事件をみてもわかるように、日本の司法は法の番人であることを放棄してしまっているといえます。正義よりも自分の利益・保身を優先させるという体質は大阪地検特捜部に限ったことではないということが明らかになりました。今日の決定までの間に政治の圧力もあったであろうことは容易に想像できるのですが、船長の釈放という決定が、現場でそれこそ命がけで職務を遂行しようとしている人たちの意欲を著しく削ぐことになるのは間違いありません。
 のは日本の至る所で見ることができます。今回の決定に対する批判が轟轟と湧き起こることになるでしょう。しかし、まじめに努力している人たちが馬鹿を見るという暗黙の事実が日本の社会の活力を奪っているということを指摘する人はあまりいないのではないかと思います


付記
 領土問題というのは結局は力の問題です。日本が日清戦争で得た遼東半島を三国干渉によって放棄させられた事例をみてもわかるように、どんなに正論を述べようとも力が弱ければ通用しないのです。それが悔しければ力をつける以外にありません。その点中国は、かつて力が弱かったために列強によって蹂躙されたという経験があるだけに、そのことをよく知っている国です。金を払ってアメリカに守ってもらえば自分たちは金儲けに専念できると思っているうちは、同じようなことはこれからも繰り返されることになるはずです。
by T_am | 2010-09-24 23:26 | その他