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カクレ理系のやぶにらみ

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時間のある方はお読みください。軽い気持ちで読み始めると頭が痛くなります。

教育の部分的改革に関する私案

 以前この欄で、デジタル教科書教材協議会による教科書をデジタル化しようという提案について批判的な意見を申し上げました。その理由は、協議会設立のレセプションで孫正義社長が行ったスピーチを聞いて、教育改革の目的として将来の有能なビジネスマンを育てなければならないというところに主眼があるように思えたからです。日本中のこどもに有能なビジネスマンを育てるための教育を施してどうなるのだと思うのですが、このような要望は経済界には根強いようです。
 そこで今回は経済界の皆様にご満足いただけるように教育の一部を改革することをご提案したいと思います。

 改革といっても単純なものであり、それは、中学校卒業生を対象にした7年間のビジネススクールを開設するというものです。ただし、このビジネススクールには日本のエクセレント・カンパニー100社が協賛しており、卒業生にはこれらの企業に就職できるという特典が与えられます。
 卒業生を無条件で採用するわけですから、ビジネススクールは生徒に対しどこの企業でも通用する知識とスキルを身につけさせなければなりません。そのためには、必要な単位を取得できない生徒は落第=退学という仕組みにする必要があるでしょう(たとえばビジネスマンが大好きなTOEICで800点以上をとらないと卒業させない、とか)。こうして毎年何割かの生徒が脱落していくことになるので、高校や大学からの編入試験を年度末に行なうようにして欠員を補充する仕組みも必要です。
 こうすることで、このビジネススクールの卒業生であれば誰でも一定の水準以上の知識とスキルを身につけていることが保証されるようになるので、企業は誰を選んでもよいということになります。その人の性格については、入学試験や編入試験の際に企業の人事担当者が面接してそれで合格したものだけを入学させるようにすればいいのです。具体的には筆記試験の合格者に対し面接を行い、それで合格した者を入学させるということになります。つまり、企業が行う採用試験を中学校卒業時に実施してしまうと考えた方がわかりやすいかもしれません。
 企業はその代償として、自社の採用枠×百万円を毎年このビジネススクールに寄附しなければなりません。10人採用するのであれば1,000万円を寄附するわけです。それでも企業が毎年新卒を採用する経費に比べればずいぶんと割安になっているはずです。
 また生徒に対しては、卒業後の就職が約束されているのですから、このビジネススクールに入学したいという学生は後を絶たないものと予想されます。したがって授業料も公立高校よりも多少割高に設定しても文句は出ないはずです。そして3年経った段階で、国立大学並の授業料をとるようにすることも可能です。家が裕福でなくても才能の豊かな生徒はいるはずですから、彼らのために奨学金制度も整備する必要があるでしょう。

 将来国際社会に出ても十分通用する有能なビジネスマンを育てたいというのであれば、教科書をデジタル化するよりも、このようなビジネススクールを開設する方がよほど確実です。
 このようなスクールというのは、何もビジネスマンを養成するものばかりでなくてもよいのです。医者になりたいこども、弁護士になりたいこども、官僚になりたいこども等々。こういう子供たちを集めて専門の知識とスキルを教え込むスクールを開設すれば、入学希望者はいくらでもいると思います。(その際の要点は、卒業することは難しいけれども卒業すればその業界に確実に就職することができるという仕組みにすることです。)
 また、将来何になりたいかよくわからないというこどももいることでしょうから、そういうこどもは普通に高校に進学することになります。その代わり、高校在学中(あるいは高校卒業時)に将来なりたいものが決まったならば、そのスクールの編入試験を受ければよいのです。
 そのように考えると、私の提案は、こどもに対して選択の幅を広げていると考えることができます。現在は、中学を卒業するこどもは高校へ行くという選択しかありません。そうなると、こどもの適性や本人の希望を無視したカリキュラムであっても、生徒にはそれを拒否することはできないのですから、苦しい思いをするために高校に進むという結果になっていると思います。
 我慢して高校を卒業した場合はまだましであって、大学へ行くか専門学校へ行くという選択肢があります。しかし、将来自分が何になりたいかよくわからない生徒が、とりあえず大学へ行っておくかという動機で大学へ行く場合もあります。また、専門学校を卒業したからといって、希望する業界に就職できるという保証はどこにもありません。
 それよりも自分の進路をきちんと決めたこどもに対し、その希望をかなえる仕組みが教育制度の中にあってもいいのではないかというのが、今回の提案の根本にあるのです。


(追記)
 教科書をデジタル化することで、そのハードウェアやソフトウェア、あるいはコンテンツを供給する企業は莫大な利益をあげることができるかもしれませんが、そういう楽な商売にあぐらをかいている企業というのはいずれ衰退するというのは歴史が証明しています。国際的に通用する有能で競争力を持った人材を育てるべきだといいながら、彼らの受け皿となることが期待される情報通信企業が競争のない商売を目指すことになるのですから皮肉なものです。
by T_am | 2010-08-16 23:20 | その他