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カクレ理系のやぶにらみ

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時間のある方はお読みください。軽い気持ちで読み始めると頭が痛くなります。

教育に対する思い込み(3)

 前回前々回とデジタル教科書について述べてきましたが、それ以外のデジタル機器が学校でどのように使われているのかも考える必要があります。ちょうどいいタイミングで、日経パソコン誌がそれを紹介していましたので、今回はその内容を中心にご紹介することにします。

 昨年、経済対策の一環として国が「スクール・ニューディール」構想を発表し、補正予算に2千億円以上の予算が盛り込まれました。その内容は、既存のアナログテレビを地上デジタルテレビに整備する。電子黒板を小中学校に1台ずつ整備する。教育用・校務用パソコンを整備する、というものです。その結果、教員の校務用パソコンの台数は1人に1台となり、電子黒板の設置数もそれまでの2万台弱から6万台弱にまで伸びました。
 それまでハードウェアやネットワークといったインフラ整備のための予算は組まれていたのですが、地方交付税交付金として措置されていたために、財政難を理由に他の事業に回す自治体もありました。したがって自治体によって整備状況に差が生じていたのですが、「スクール・ニューディール」では別枠で予算を確保したことにより、整備が格段に進んだのだそうです。末期の麻生政権の評判は芳しいものではありませんでしたが、なかなかいいことをしてくれたと思います。

 電子黒板の利点は、「デジタル教材などをそのまま投影できるため、板書の手間を削減できる 」(日経パソコン 2010年8月9日号。以下同じ)ことにあります。さらに「重要な箇所を拡大する、電子ペンで書き込むといったことも可能」ですから、生徒の理解を助ける効果が高いのです。
 電子黒板は1校に1台の割合ですが、もっと「手軽な機器として実物投影機(書画カメラ)の導入も進んでいる」とのことです。これはカメラの下に置かれたものをスクリーンに投影する機械で、操作が簡単なことから誰でも使えるという利点があります。実物を拡大して投影するので、生徒にわかりやすく説明することができるうえに、授業に飽きないように注意を引くことができるという効果もあるようです。
 同紙によれば、このようなITC(情報通信技術)機器を「活用した授業と活用しない授業を実施し、その後の学力テストの結果を比較」したところ、ITCを活用した方がテストの結果がよかったということであり、教員もその効果を実感しているとのことです。
 従来の教科書と板書だけという授業よりも、電子黒板や実物投影機を用いた方が生徒の関心をひきつける効果は高くなるというのは理解できることです。学校におけるITC機器の活用のポイントは教師の説明を助けるというところにあるようです。
 
 また、校務用パソコンの普及が進んだことによって、使い方によっては教師の作業が効率化されるというメリットも無視できないと思います。そのためには教師のスキルアップを促すということも必要であることはいうまでもありません。
 
 こうしてみるとITC機器というのは、教育のためのツールのひとつであると理解した方がよいと思います。大切なのは、これらの機器を使って何をするかであり、これらの機器が使えるようになることではありません。この点、企業の中のパソコンの使われ方とまったく同じであるといえます。
 学校におけるITC機器の用途のひとつ目は、副教材として教師の説明を助けるというもの。ふたつ目は教師の作業を効率化するということです。事務作業はパソコンを使えば手作業で進めるよりも圧倒的に早く処理することができます。
 3番目の用途としてはソフトウェアを活用することで、生徒の学習を助けるというものです。その事例として関西大学初等部の事例が載っているので簡単にご紹介しましょう。
 紙とパソコンを使いながら作文をまとめるという授業では、生徒はまずメモ用紙程度の紙を何枚を使って作文の構成をまとめます。1枚のメモ用紙が1段落ということで、それらをどのように組み合わせるか、また、何が不足していて何が不要であるかをこれによってまとめます。次にパソコンを使って作文を執筆し推敲していくのですが、二人一組になって作文を書く生徒とそれを横で読む生徒というふうに役割を決めます。こうすると、自分が書いている作文に対し、こうしたらいいのではないかという指摘がでてくるので、その場で推敲するという課程を通じて考える力が身につくのだそうです。また編集の履歴を残しておくことでどのように推敲したかという課程を負うこともできます。
 できあがった作文はプリンターで印刷するので見栄えもよくなります。また、字の上手下手も関係なくなるので、教師は作文の内容で評価することが可能になります。

 ITC機器を授業に用いて効果があがるというのは、生徒が授業に集中するようになるというところがポイントであるように思います。そうでなければせっかくITC機器を導入したとしても無駄になるでしょうが、熱心な教師はどこにでもいるものです。これら有志の教師の地道な試行錯誤というのはとても大切なことではないかと思います。
 どうやら現場の教師や生徒たちが気持ちよく授業に臨むことができる環境を整えてやることが教育改革の要点であるようです。外部からあれをやれ、これをやれと口を挟むの百害あって一利なしといえそうです。
 日経パソコン誌では公立学校情報化ランキングというものをまとめています。評価ポイントは「インフラ整備」(パソコンやネットワークなどの環境整備の進展度合い)と「教員指導力」(ICTを授業に活用したり情報モラル教育をするという能力を教師がどれだけ身につけているか)の2項目であり、データとして文部科学省が実施している「学校における教育の情報化の実態等に関する調査」を用いています。

http://pc.nikkeibp.co.jp/article/knowhow/20100729/1026596/

 それによると大阪府では小学校中学校ともビリから2番目の結果となっています。学力テストの結果とこのランキングとの間に因果関係があるかどうかは不明ですが、相関関係があることは間違いないようです。橋下知事は、学力テストの結果が低いと怒るだけではなく、学校の環境整備を進めた方がよいといえるでしょう。
by T_am | 2010-08-11 20:23 | その他