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カクレ理系のやぶにらみ

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時間のある方はお読みください。軽い気持ちで読み始めると頭が痛くなります。

財政再建のための私案(5)

 立法府の選挙の動向によって内閣が影響を受ける議院内閣制には長所と短所があります。
 最大の長所は、内閣の暴走に対し世論のチェックがかかるということでしょう。最近では圧倒的な人気により颯爽と登場した安倍内閣が、憲法改正のための国民投票法を成立させ、また愛国心を盛り込んだ教育基本法の改正を行うなど、精力的にに「改革」に向けて取り組んだところ、国民が安倍内閣の急激な改革に危惧たことにより参議院選挙で大敗するという出来事が起こりました。参議院での与野党逆転(「ねじれ」)は国会運営を困難にし、安倍総理は病気辞任。次の福田総理は任期途中で嫌気がさして辞任してしまいました。その後を引き継いだ麻生総理は衆議院を解散するかと思いきや、新規満了まで引きずった挙げ句総選挙では大敗するという事態を招きました。
 ただし、小泉内閣のときの郵政選挙では自民党が大勝したのですから大衆というのはあてにならないものであることを忘れてはなりません。
 次に、議院内閣制の短所としては、政権が国民の人気取り的な政策に走りやすいということが上げられます。鳩山内閣が自滅するきっかけとなった普天間基地の移設問題はその典型的な事例です。
 人気取りの政策というのは、当然近視眼的なものであり、後先のことを考えずに実行されるという側面があります。国の借金が800兆円もあるので財政再建について一歩も引くつもりはないと菅総理は断言していますが、元はといえば、後先のことを考えずに特例国債(赤字国債)を発行し続けてきたツケを払わなければならなくなったということになります。
 総じて議院内閣制には、国民によるチェックが働きやすい反面、近視眼的な政策がとられやすいという短所もあります。また、世論というのは誘導することができるので、国民によるチェック機能というのも金科玉条のように考えるのもどうかと思います。
 何度も述べるように、消費税増税は嫌だけれども財政再建のためにはやむを得ないと考える人が増えているのも、官庁とマスコミによる世論誘導の成果であるといえます。一般会計予算(およそ80兆円)の10倍の国債残高があるのですから、これらを解消して国債発行に頼らないようにするには10年以上の歳月が必要となります。けれども財務省も政治家も(もちろん菅総理も)財政再建のための工程表を作成し、国民に説明したことはありません。民間企業であれば経営再建のために当然行われるべきプロセスが国家財政となるとまるっきり無視されてしまうにもかかわらず、誰もそれを不思議に思わないというのがわが国の現状です。
 なぜそんなことがまかり通るのかというと、日本では10年も続く長期政権などあり得ないからです。極端な場合選挙のたびに首相が替わるのですから、そのような長期的な戦略を描いても実行できるはずがありません。

 ここに議院内閣制の致命的な欠陥があるといえます。

 そこで首相を公選制にして、3年ないし4年の任期を全うできるように制度を改めるべきであるというのが私の提案です。それだけの時間があれば、じっくり腰を据えて改革に取り組むことができるようになるはずです。したがって、首相公選制の下では、候補者が掲げるマニフェストは、「何をやるか」だけではなく、「何をどのような手順でやるか」というものに変わっていかなければなりません。また、その内容は様々な批判に耐えられるだけの水準を備えておかなければならないので、作成するだけでも結構な手間と時間がかかることになります。
 国民によるチェック機能については、定期的に行われる衆議院選挙と参議院選挙に反映されることになります。首相の政策に不満を感じる人が多ければ、与党は勢力を失うことになるからです。
 そうなると内閣の提案がことごとく国会で否決されるのではないかという心配をする方も多いかもしれません。
 現在の衆議院と参議院の勢力逆転現象を「ねじれ国会」と命名していますが、「数の力で国会を押し切る」という考え方に立つとこのような発想となります。しかし、見方を変えれば、衆議院と参議院の勢力の逆転現象は、力尽くで行う国会運営に国民が辟易しているからだと考えることもできるのです。与党による強行採決が行われてきた結果が今日の体たらくではないか、もっときちんと国会で議論を重ねるべきである。国民はそう望んでいると考えることもできます。
 つまり、国会で丁寧に説明をし世論を味方につけたほうに軍配が上がる、現在の局面はそのようになっており、これは衆議院が解散されるまで続くということなのです。そういう意味では、少数政党であっても説得力のある提案を行って世論を味方につけることができれば、その政策は国会を通すことができるということでもあります。ありがたいことに、マスコミはしょっちゅう世論調査を行って、新聞やテレビで公表してくれています。それを利用しない手はありません。

 首相公選制が行われるようになると、内閣不信任決議という手続きができなくなります。なぜなら任期中はその人に首相職を任せるというのは公選制の目的だからです。そのことに不安を覚える必要はありません。衆議院選挙は4年に1度、参議院選挙は3年に1度実施されるのですから、首相の政策に不満がある人は野党に投票すればいいのですし、世論が反対する政策が国会で可決される可能性は低くなります。
 このことは、衆議院議員も解散に怯えることなく任期を全うできるということになり、それだけ選挙費用の負担が軽くなるという効果をもたらします。衆議院議員にとっては願ってもないことではないでしょうか。
 その代わり、首相の権力がそれだけ衰える(日本の場合首相の権力の源泉は衆議院の解散権にあるといってもよい)ということになるので、アメリカ大統領のように拒否権を持たせるのもよいかもしれません。

 日本の現状は、首相の指導力の不足を指摘する人は多いけれども、なぜそんなことになっているのかについてまで言及する人は少ないといえます。短期間のうちに、これだけ首相がころころ変わるのですから指導力が発揮されるはずがないというのはおわかりいただけると思います。
 重要な政治課題には首相の指導力が必要となります。現在の制度はそれを奪う方向に作用しているのですから、菅総理や自民党が消費税増税により財政再建に取り組むといっても、結局は増税だけ行われて赤字国債に依存しなければやっていけない体質が変わるとはとても思えないのです。
 皆さん、そうは思いませんか?
by T_am | 2010-08-04 20:19 | その他