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カクレ理系のやぶにらみ

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時間のある方はお読みください。軽い気持ちで読み始めると頭が痛くなります。

相撲協会の感度

 相撲界の野球賭博事件に関する報道が連日行われているのをみて、これはいったいどういうことなのだろうと考えていました。その上で到達した結論は、相撲協会とそこに属す親方・力士の感覚の鈍さが、ここまで騒がれる原因であろうというものです。

 相撲をめぐる八百長疑惑は昔からいわれてきましたが、いっこうに払拭される気配はありません。また、時津風部屋で起きた力士死亡事件、元横綱朝青龍による一般人への暴行事件、マリファナ事件など他のプロ・スポーツ界(相撲がスポーツかどうかは疑問がありますが)と比較しても事件が多い世界であるといわなければなりません。
 マリファナ事件では力士が解雇されましたし、力士死亡事件でも逮捕者が出ました。朝青龍は引退に追い込まれましたが、どうやら相撲界の人たちはこれらの事件について真剣に考えるということを怠ったものと思えます。

 起きてしまった事件から教訓を得ようと思うならば、1)どのように対処するのがよいのか、2)同種の事件を今後起こさないようにするにはどうしたらいいか、このような観点で事件を総括することになります。その際に外部の人間を入れるのは、身内だけでは気づかないものの見方があるからです。
 ところが相撲協会がもっぱら関心を示したのは、事件を起こした人間をどのように処罰するかにあったようです。そこには危機管理をどうするかとか、予防措置をどのように講じたらいいかという発想がなかったのだと思います。形を変えて刑事事件が頻発するのは、そのような背景が相撲協会の内部にあるからではないでしょうか。

 まず、危機管理という点について、今回の野球賭博事件でも相撲協会は、調査結果の公表が不十分であるという批判を受けています。(調査に時間がかかりすぎているようにも思いますが、そのことについての指摘はあまりないようです。)
 一般に、事件として報道されてしまえば、世間の耳目はそのことに集まるのであり、大衆の好奇心が満足するまで、知りたいという欲求が途絶えることはありません。マスコミはそのことに敏感ですから、いつまでも食らいつくということが起こります。そのような騒動を早期に鎮静化するには、調査して明らかになった事実を包み隠さず公表する以外にありません。それはまさに時間との戦いであり、調査結果の公表が遅れればそれだけ蒙るダメージは大きなものとなります。
 この点、相撲協会の対応は落第であるといわねばなりません。過去にあれだけ騒動を起こしておきながら、何も学んでいないというのはよほど鈍感なのだろうと思います。

 次に、予防措置について。相撲協会はさほど大きくない組織であり、他の組織と違って分業が行われているわけでもありません。このように単純な組織では、その構成員が意識を変えることが予防措置となります。逆にいえば、意識が変わらなければ予防も何もないということで、そのためには上から順番に意識を変えていくということが有効です。
 どの企業でもコンプライアンスということがいわれています。それがどのように行われているかというと、まずトップがその必要性を認識し、社内に訴えていくことによって、役員や部課長がことあるごとにコンプライアンスというようになり、ついには一般社員にまで伝播していくのです。もちろんコンプライアンスを推進する部署(たいては法務と総務)も設けられます。
 では相撲界はどうかというと、憶測でものを申し上げるのは恐縮ですが、たぶん理事の誰一人(外部から招聘された理事はともかく)として、コンプライアンスという意識がないのだろうと思います。したがって、親方たちにもそのような意識が芽生えるはずがありません。ましてその弟子である力士たちにもコンプライアンスについて無知であるという状況が起こるのでしょう。
 一般に、組織が閉鎖的であり、同じ業界の人間としか接する機会がない人間(かつて日本のサラリーマンはほとんどがそうでした)ほどモラル・ハザードを起こしやすいといえます。また、モラルを喪失した人間ほど出世するという状況もこれに拍車をかけています。

 このように考えてみると、相撲界という特殊で閉鎖的な組織であればこそ、次々と刑事事件を引き起こす体質が温存されているのだろうということに気づきます。一部の識者やマスコミは、相撲協会が公益法人(正確にいうと文部科学省スポーツ青少年局競技スポーツ課所轄の特例財団法人)であることへの甘えや国技と呼ばれることへの甘えがあると考えているようですが、他のプロ・スポーツ団体のように潰れることが(たぶん)絶対にないという点では極めて恵まれているといえます。
 プロ野球チームでは収支が悪化すれば身売りせざるを得ません。Jリーグで身売りをしたチームがあるかどうかは知りませんが、収支が悪化すれば選手の待遇や練習費用にまで響いていくことは間違いありません。もっとマイナープロ・スポーツであれば、消滅するかもしれないという危機感がつきまとっていることでしょう。
 しかし、大相撲だけはそのような心配とは無縁でいられます。というのは、中高年層を中心に根強いファンが多い(企業による懸賞金はこのため)ので、本場所はNHKが欠かさずテレビ・ラジオ中継してくれるからです。

 ところが、ここへ来て懸賞金を取りやめる企業が出て来たり、NHKが名古屋場所の放送について見直すことも検討しているとも報道されています。相撲協会としては頭の痛いところでしょう。
 ところで名古屋場所(7月11日初日を予定)を開催するかどうかは7月4日の臨時理事会で決定するとのことですが、なぜ7月4日なのでしょうか? おそらく、本音は名古屋場所を開催したいのでしょうが、開催決定後に力士の中から賭博容疑で逮捕や書類送検される者が出て来た場合、当然名古屋場所に出場させるわけにはいかなくなるので、番付がその分空位となってしまいます。仮に逮捕者や書類送検される力士が何人も出た場合、番付は虫食いだらけとなってしまいますから、名古屋場所が開催できなくなってしまいます。その辺の見極めをするタイムリミットが7月4日ということなのでしょう。
 このような見方があたっているとすると、相撲協会はまったく懲りていないということになりますから、今後も類似の事件が発生することが想像できます。相撲協会の真意がどこにあるのかは、今後行われるであろう調査結果がどこまで公表されるのによって窺い知ることができます。
 さて、どうなるのでしょうか?
by T_am | 2010-06-23 23:10 | その他