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カクレ理系のやぶにらみ

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時間のある方はお読みください。軽い気持ちで読み始めると頭が痛くなります。

口蹄疫対策

 宮崎県で発生している口蹄疫がついに隣の県にまで広がりました。日夜、口蹄疫対策に奮闘してこられた皆様の努力にもかかわらず、口蹄疫の感染エリアが広がっているということは、今まで行ってきたことが充分ではなかったということになるのでしょう。

 口蹄疫にかかった家畜は人間と違って治療されることがありません。治療して治ったとしても、肉質が落ちてしまい高く売ることができないからです。治療されることがないのですから、放っておけば周囲に口蹄疫ウィルスをまき散らすことになります。そこで速やかに殺処分することになるのですが、その間に同じ畜舎内の他の家畜が口蹄疫に感染している可能性は排除できないので、一頭でも口蹄疫に感染した家畜が発生した農場では、そのすべての家畜を殺処分にするということになっています。

 今回の場合、あまりにも大量の家畜を殺処分しなければならないようになったために、処分が進まないという事態が発生しました。
 殺処分した家畜は焼却するか埋却しなければなりません。現実的なのは埋却処分ですが、そのための土地の確保に手間取っていること、および殺処分をする獣医の人数が足りないことがその原因です。
 殺処分と埋却。言葉でいうのは簡単ですが、埋却する土地を確保して、それから埋却用の穴を掘らなければなりません。さらに、薬殺した家畜をそこまで運搬しなければなりませんし、埋却した跡はきちんと土をかぶせておかなければなりません。さらに運搬に使った車両は消毒しなければなりませんし、作業にあたった人間も同様に身につけていた衣類を焼却するなどしなければならないのです。
 殺処分対象の家畜が十数万頭にまでふくれあがってしまったのですから、従来と同じやり方ではいっこうに処理が進まないのは自明の理といえるでしょう。その間ウィルスに感染しているかもしれない家畜が生かされているわけです。
 
 口蹄疫の感染が広がっている二番目の原因は、感染ルートの遮断が完全ではなかったと考えられます。道路にマットを敷いて通行する車のタイヤを消毒するという映像をテレビでご覧になられたことと思います。移動禁止区域と制限区域を設けてこれだけ厳重な体制をしいていたにもかかわらず、感染が広がったということは、口蹄疫の感染ルートは何も人間だけに限ったものではないと考えられ、たとえば、餌を求めて畜舎の近くまでやってくる野生の動物や昆虫などもウィルスを運搬しているのではないかと疑われます。
 そうかといって、野生動物や昆虫まで殺処分することは不可能です。
 ではどうしたらいいのかというと、畜舎を外部と物理的に遮断するという方法が考えられます。防虫ネットや防獣ネットなどを用いて、動物や昆虫が畜舎に近づくの防ぐというのはウィルスを隔離するということであり、隔離は感染症対策の基本です。
 にもかかわらず、このたびの口蹄疫対策はマニュアルに書かれていることに忠実すぎるように思えるのです。

 感染の疑いのある家畜はすべて殺処分しなければならない。
 殺処分した家畜は焼却か埋却しなければならない。

 これらの方策が定められているのは、ウィルスと健康な家畜を隔離するためです。したがって、殺処分が遅れているのであれば、別な隔離の方策を考えるというのが当然でしょう。
 今回政府がとった方策は2つあります。ひとつは感染がまだ確認されていない牛や豚にワクチンを投与すること。ふたつめは、感染エリアの外側の家畜を屠殺処分して出荷してしまうことでした。
 これらは、山火事を広げないようにするために、その外側のエリアの木を切り倒すということと発想は似ています。
 ところが、屠殺して食肉に加工するといっても処理場の能力には限界がありますし、ワクチンを投与しても感染を完全に防ぐことができず、何割かの確率で口蹄疫が発症するとのことです。そうすると、これらの方策は机上のプランということになってしまいます。

 硬直的対応の事例として、エース級の種牛を残して他はすべて殺処分したというのもそうでしょう。種牛の場合、食肉にするわけではないのですから、他の家畜にウィルスを感染させないような手段が講じられていれば、何も殺す必要はなかったと考えられます。
 口蹄疫対策の目的は、他の家畜にウィルスを感染させないということですから、そのための手段というのは、これしかないというものではないはずです。状況に応じて適切な手法を選択して指示する。せっかく農水省からトップクラスの人間が派遣されているのですから、他の省庁に働きかけて弾力的な対策の指示がなされるべきでしょう。

 現時点で考えられる対策として次のようなものが考えられます。

1)検問所での車両の消毒を徹底する。
2)殺処分された家畜の埋却場所として国有地を提供する。また、穴を掘るための重機と運搬のためのトラックを大量に借り上げる。
3)短期決戦のつもりで、殺処分の実施が法的に認められている獣医を全国から大量に派遣する。
4)他県の食肉処理場も利用できるようにする。
5)畜舎に防虫ネットや防獣ネットを設置して、家畜を外部の野生動物・昆虫から隔離してしまう。

 既に実施されている対策もありますが、要は、縦割り行政の枠を超えて柔軟な対応ができるようにするということであり、そのためには強力な決定権のある人(もしくはその権限を委譲された人)が現地に入らなければならないでしょう。また、費用もかかるでしょうが、それは後で清算することにして、まず対策を実施するということも必要でしょう。
 人間の病気とは対応策が異なるのですから、短期決戦態勢で望むというのが必要であると思います。 
by T_am | 2010-06-15 06:50 | その他