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カクレ理系のやぶにらみ

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時間のある方はお読みください。軽い気持ちで読み始めると頭が痛くなります。

言いがかりとでっち上げで戦争は起こる

 今回は朝鮮半島で戦争が起こる可能性について考えてみます。
 3月26日韓国の哨戒艦「天安」が爆発・沈没した事件で、韓国・アメリカ・イギリス・オーストラリア・スエーデンの専門家による合同調査団は、北朝鮮の潜水艇による魚雷攻撃によるものだと結論づけ、日本は韓国を支持する意向を表明しました。
 これに対し、北朝鮮は「でっちあげだ」と強く反発し、韓国が制裁措置を講じたならば「全面戦争も辞さない」と警告しています。昨日からのニュースでも、韓国が設置している宣伝放送用スピーカーに対して「我々への直接的な宣戦布告であり、これらを跡形もなく消すため、全面的な軍事行動に入る」という布告を発表したことが伝えられています。
 日本人がこれを聞くと、北朝鮮がまたおなじことをやっていると思うでしょう。日本人拉致事件についての北朝鮮の対応は、金正日が認めるまでは「でっち上げだ」というものでしたから。したがって、北朝鮮の潜水艇が魚雷攻撃を行ったというのも、その後の北朝鮮の反応が伝えられるたびに、日本人は米韓の発表が真実だと感じるのだと思います。

 北朝鮮は一時期、専門家による調査チームの派遣を韓国は受け入れるべきだと主張していましたが、韓国に拒否されました。北朝鮮から派遣された調査チームの結論は「北朝鮮の潜水艇による魚雷攻撃などなかった」というものになることは明かですから、韓国が拒否するのは当然のことといえます。しかも、2008年7月に金剛山で起きた北朝鮮兵士による韓国人観光客射殺事件について、韓国が南北合同の調査を提案したときに、北朝鮮は拒否したという経緯もありますから、韓国の人々にすれば今更何をいうか、という思いもあるかもしれません。

 しかし、日本のマスコミはまったく報道していませんが、同じ時期にアメリカの潜水艦がこの付近で沈没しています。このため、哨戒艦の沈没は米潜水艦と韓国の哨戒艦の誤爆による同士討ちではないか、という可能性もあるのです。

韓国軍艦「天安」沈没の深層


 米英韓国による合同調査チームの報告後、ロシアが派遣した専門家チームは物証の検証をしましたが、その結論は北朝鮮による犯行とは断定できないというものでした。(中国は調査チームの派遣を拒否しています。)


 哨戒艦の沈没が米潜水艦との同士討ちによるものだとするとどうなるでしょうか。当局がそれを発表したとたんに、韓国の反米感情が高まることは容易に想像できます。また、アメリカの潜水艦が北朝鮮のすぐ近くで作戦行動を行っていたことで、北朝鮮との今後の交渉が不利になることも予想されます。それらはアメリカ軍と韓国軍当局にとって好ましいものではありません。それよりも、北朝鮮の潜水艇による魚雷攻撃だということにした方が今後有利になるという計算も成り立ちます。

 アメリカはでっち上げによって戦争を起こした経験が過去に何度かある国です。つい最近では、イラクが大量破壊兵器を持っているとしてイラク戦争を起こしましたし、1964年にはベトナム戦争に介入するためにトンキン湾事件(アメリカ軍の駆逐艦2隻が北ベトナムの哨戒艦による魚雷攻撃を受けた)をでっち上げています。
 今回アメリカといっしょに専門家を派遣したイギリスでも、過去に中国(当時の清)との間でアロー戦争を起こしています。これは清が取り締まった海賊船がイギリス船籍である(実際はその数日前に期限が切れていた)という言いがかりをつけて、イギリスとフランス(宣教師が一人殺されていた)の連合軍が清にしかけた戦争です。これによって清は不平等条約を締結させられるなどして半ば植民地状態に陥りました。
 
 このように、戦争は、それを望む国があれば理由など何とでもつけられるという事例が過去にいくらでもあります。日本でも徳川家康が、豊臣家によって再建された方広寺の梵鐘の銘文「国家安康」」に対し、家康の名前を分断するものであるから徳川家に対する呪詛に違いないという言いがかりをつけて大坂冬の陣の口実とした事例があります。
 戦争は、一度起こってしまえば、勝てば官軍という言葉があるように、勝った国が何をやっても許されるという側面を持っています。

 そこで今回の韓国の哨戒艦の沈没の原因が北朝鮮の潜水艇による魚雷攻撃であるという調査結果が、たとえ米英韓国による合同調査チームのでっち上げだとしても、アメリカと韓国はそれで押し通すことになります。目的は北朝鮮が持っている核兵器の無力化ですから、そのために国連安保理事会にこの問題をかけて北朝鮮に対する制裁を引き出そうというシナリオでしょう。
 一方の北朝鮮は、いかなる制裁措置も武力行使を持って報いると脅しています。当面の焦点は、韓国が国境に設置した宣伝放送用スピーカーを使い始めたときに北朝鮮がどの程度の反応を示すのか、ということになります。北朝鮮の表現は「銃撃」であって「砲撃」ではないので、比較的小規模な武力行使に終わりそうです。
 北朝鮮では実際に戦争となった場合、とうてい勝ち目はないということは理解しているので自分から戦争を仕掛けるということはまずあり得ないと思われます。その代わり、戦争を仕掛けられるのも嫌なので、食うや食わずの生活を国民に強いながらも軍事力を優先するという政策をとり続けています。つまり、韓国が戦争をしかけてくれば、それなりの犠牲を覚悟しなければならないというメッセージを常に送り続けることが、北朝鮮の安全保障の基本戦略なのです。
 
 以上のことから、今回の局面では韓国の側から仕掛けない限り戦争状態に突入することはまずないと思われます。とはいえ、偶発的な事故によって戦闘状態に突入するということもあるので無視することもできません。
 長期的にみると北朝鮮の末路は、戦争によって滅亡するか、内乱によって体制が転覆するかのいずれかであろうと思われます。前者の場合、日本にも被害が及ぶ可能性は否定できませんし、後者の場合、大量の難民が国境を越えることになります。そのいずれかを想定して対策を講じておくというのも必要だと思うのですが、残念ながらそういう議論が今まで行われたことはありません。
 日本のすぐ隣に火種を抱えているにもかかわらず、まったく関心を持とうとしない政府とマスコミ、そして国民というのは、世界でも稀な存在であるといってよいでしょう。
by T_am | 2010-06-13 19:11 | その他