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カクレ理系のやぶにらみ

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時間のある方はお読みください。軽い気持ちで読み始めると頭が痛くなります。

財政再建と増税

 韓国で開催されたG20で、「深刻な財政課題を抱える国々は健全化のペースを加速する必要がある」という共同声明を採択しました。景気対策を理由に赤字財政を続けてきたのはどこも似たようなものですが、とりわけ日本の財政赤字が大きいことは既に知られていることです。
 ギリシャ危機が伝えられたときにも、日本の財政赤字(赤字国債の発行残高)はギリシャの比ではないと解説する人がいました。どうやら世界の流れは財政再建という方向に向かっているようです。
 先日もテレビ番組の街頭インタビューで、消費税をあげることについてどう思いますかというのをやっており、実に7割以上の人が国の借金を減らすためにはやむを得ないと回答していました。財務省の官僚がこの番組を観ていたならば、おそらく小躍りして喜んだのではないかと想像されます。
 自民党では参院選向けのマニフェストに消費税率を10%にすると盛り込むそうです。あえて消費税率を上げると盛り込むことで、財政再建に真摯に取り組もうとしているという姿勢をアピールすることが狙いと思われます。

 でも、消費税を上げれば財政再建が可能になるのでしょうか?

 消費税が導入された平成元年当時は税率は3%でした。その後平成9年に税率が5%に引き上げられました。さらに恒久減税という名目で行われてきた所得税減税がいとも簡単に廃止されたのは平成18年のことです。
 このように過去何度も増税が行われてきましたが、赤字国債が減ったのかというとそうではありません。
 「最近10年間の年度末の国債・借入金残高の種類別内訳の推移」というサイトから、毎年の赤字国債(特例国債)の残高の推移をみてみましょう。


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 このように、増税が行われても財政赤字が一向に減っていないということがわかります。また、国の借金が800兆円を超えたという報道がありましたが、それは国債と借入金をすべてひっくるめた話であり、建設国債もその中には含まれている(平成21年度で2,249,123億円)ということがこのファイルを見ればわかるのです。
 企業活動の場合、債務といってもいろいろな種類があり、投資のための資金調達として発生する債務もあれば運転資金を賄うために発生する債務もあります。前者は経営面で前向きな資金需要であり、後者はあまり健全でないといえます。ところが、これらの債務をすべてひとまとめにして「借金」といってしまうとネガティブなイメージとなってしまいます。
 国の場合、投資が行われるわけではありませんが、道路や港湾整備などの社会資本を充実させる目的で発行される建設国債は、その分資産として残るわけですから前向きな債務であると考えることができます。ところが、誰が発表したのか知りませんが、「国の借金は800兆円を超えた」といってしまうと、これらの債務もすべて悪いことのようになってしまうのです。これでは事実を正確に伝えているとはいえません。
 企業でもそうですが、財政規模が大きくなれば債務の総額は当然大きくなります。それがいけないというのならば、トヨタ自動車やNTTはどうなるのでしょうか? 
 債務の総額が大きいということは必ずしも悪ではありません。その内容を見ないと何とも判断できないのです。
 企業の経営内容をみるときに、損益計算書と貸借対照表、キャッシュフロー計算書は必須のデータです。しかし国や地方自治体については貸借対照表すらないのが実情です。にもかかわらず、国の財政の内容が悪化していると断言するのは、いったい何を根拠にしているのでしょうか?
 
 「借金」という言葉を使うと、いつか完済してゼロにしなければならないと考えてしまいがちです。しかし、企業経営では債務がゼロになることはありません。資本(自己資金)の不足を補うのが債務だからです。
 国の場合もまったく同じであるにもかかわらず、意図的に「借金」という言葉が使われています。その理由は、危機的状況を煽ることで得をする人たちがいるからです。
 その結果が、将来の世代に借金を残すわけにはいかないので消費税率を上げるのはやむを得ない、と考える人々の増加を招くことになります。

 過去に何度も増税していながら国の「借金」がいっこうに減っていないにもかかわらず、消費税率を10%に引き上げようというのはのはなぜですか?

 増税によって財源が増えれば、その分予算を増やして使い切ってしまおうと考えるのが官僚です。その考え方を捨てない限り財政赤字が減ることはありません。
 
-でも、事業仕分けで無駄な支出を洗い出したではないか?

 そうですね。でも事業仕分けというのは民主党政権が行おうとする政策の財源をひねり出すために行われているものですから、結局、使い切ることに変わりはないのです。
 
 支出が減らなければ財政赤字が減ることはありません。小泉内閣のときには、ゼロシーリングだとかいってとにかく支出を削りました。問題は、何を削るか、です。

 昨年から実施されている高速道路の割引ですが、これは自動車を保有する人のうち、高速道路を走る機会があって、なおかつETC車載器を搭載している人が対象です。その人たちが高速道路を走るさいの料金割引の原資は、自動車を持たない人や自動車を持っていてもETC車載器を搭載してない人たちが負担する税金からも支払われています。
 この6月から実施されたこども手当も同様です。中学生以下のこどもがいない世帯でもその分の原資を税金という形で負担しなければなりません。それで足りない分は赤字国債として未来の納税者が負担しなければならないのです。
 このように、日本には補助金や奨励金、交付金、給付金などの名目の補助金が多すぎるのです。
 今年度から実施されている農家の戸別所得補償制度もそうです。私が住む新潟県ではこれに応募する農家が伸び悩んでいます。というのは、減反に協力して戸別所得補償制度を活用するよりもコシヒカリをどんどんつくって売った方が儲かるからです。やる気のある農家はそんな制度をアテにするよりも、売れる米をつくって自分で売りさばいた方がいいと考えています。そういう点でこの制度は農業をダメにする制度であるといえるでしょう。

 このように意味のない補助金制度がこの国には多すぎるのです。

 それらの財源は私たちが納める税金ですが、補助金を支給するためには事務経費がかかります。これは、印刷費・通信費・ソフトウェア購入費・役人の人件費・事務作業の外注費として発生します。つまり、補助金の数が増えればそれだけ役人の仕事が増えるわけです。民間企業でリストラが行われても官庁でリストラが行われないのはこのようなカラクリがあるからです。
 
 自分たちの雇傭を守るために仕事を創り出す一方で、財政支出の内容を分析するための貸借対照表でさえつくろうとしない。これが官僚の実態であり、それを是正させることのできない政治家も情けないといえます。
 あれだけ大勢国会議員がいて、いったい普段何をしているのか不思議でなりません。
 国の借金が増え続けていると宣伝するのであれば、その当事者である官僚と政治家はまず辞表を提出すべきでしょう。増税はするけれども支出を削減することはしないというのでは、将来の世代のために消費税率のアップもやむを得ないと考える人々は浮かばれません。

 消費税率が10%になったとしても、財政赤字が改善することはありません。その代わり、報道資料としてまた違った数字を出してきていかにも改善しているかのように繕うであろうことは明白です。考えられるのは、赤字国債(特例国債)の発行額を一時的に減らしておいて、前年よりも赤字国債の残高が減ったと宣伝するということです。
 今いわれているのは、赤字国債は建設国債も全部含めた「国の借金」であり、それが「赤字国債の残高」というように数字のすり替えが行われると思われます。
 新型インフルエンザによる死者が200人と日本は先進国の中でも最も低い水準であったと発表されました。例年の季節性インフルエンザによる死者数は1万人以上と発表されていました。ゼロが2つ違うことにびっくりされたことと思います。その代わりこの数字は推定値です。今まで推定値で来ていながら、昨年に限って実際の数値を持ち出してきているのです。先進国の中で日本の死者が少なかったのは厚生労働省の対策が効果をあげたからだと御用学者が述べていましたが、わが国の政府もマスコミもしょせんこんなレベルです。
 
 だから政府やマスコミがいうことを鵜呑みにしてはいけない、というのが今回の結論です。
 増税が必要だと政治家が訴えてきたら、「だったらその根拠を示すための貸借貸借対照表を各省庁別に作成して毎年公開しろ」、私たちにはこれくらいのことを言う権利はあるはずです。


追記
 官僚や政治家が国民の不安を煽って、自分たちに津堂のいいように世論を誘導するというのは、最近では、地球温暖化、食糧自給率がありましたが、ここへ来て財政再建というのが加わったということです。
 本来ならば、マスコミがそれをチェックすべきなのですが、内閣官房費からカネをもらって飲み食いさせてもらっていたのですから、そのような機能をマスコミに期待するのは無理な相談でしょう。
 ところで、政府からカネをもれって当然と思っているマスコミ人がいるということは、企業からカネをもらっているマスコミ人もいると考えるのが自然ではないでしょうか?
by T_am | 2010-06-08 23:27 | その他