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カクレ理系のやぶにらみ

tamm.exblog.jp

時間のある方はお読みください。軽い気持ちで読み始めると頭が痛くなります。

種牛まで殺す必要があるのか

 東国原知事が、恋うて家菌感染した疑いがある種牛49頭について、直ちに殺すのではなく遺伝子検査をするので経過観察を認めてほしい、と述べています。
 合理的な判断だと私は思います。

 口蹄疫という伝染病がなぜ恐れられているかというと、発症した牛では肉質や採乳量が落ちることになり売り物にならなくなること、および伝染力が非常に強いという2つの理由によります。
 すなわち、ある飼育場で口蹄疫が発生するとそこにいる他の家畜もいずれ感染するものと思われるので、実際の感染の有無はともかくとして、その飼育場のすべての家畜に買い手がつかなくなってしまうことになります。これでは牛や豚を飼育する意味がありません。
 仮に治療を行うとしても、その間に口蹄疫が他の家畜や飼育場にまで広がっていく危険性があるので、現実的な対応策ではありません。そのような理由によって飼育場単位ですべて殺処分することが決められているのであって、これ以外に打つ手はないと考えられます。
 このように、口蹄疫にかかった疑いのある家畜はすべて殺処分にするというのは、家畜を飼育する目的が食肉用や採乳用であって、口蹄疫の発生はその目的の障碍となるからです。

 しかし、種牛というのは精液を採取することが目的の牛なのですから、たとえ口蹄疫に感染したとしても、きちんと治療して病気が治れば、精液にウィルスが混入しない限り実害はありません。したがって対処法を誤らず、厳重に管理すれば、種牛に限っては口蹄疫に感染したからといって何も殺す必要はないということになります。

 考えられる対処法というのは次の通りです。

1)口蹄疫の治療を行う。
2)今後、他の牛にウィルスが感染しないよう「完全に」隔離する。
3)精液を検査してウィルスがいないことを確認する。


 このような災害が発生したときに、当事者が硬直した考え方で対処しようとすると、効果的な対策を講じることが遅れ、結果として2次被害を拡大することにつながります。
 今回の東国原知事の要望は理にかなったものなのですから、国(というよりも農水相の官僚と政治家たち)が適切に判断し対処することが望まれます。
by T_am | 2010-05-23 11:30 | 科学もどき

by T_am