人気ブログランキング | 話題のタグを見る
ブログトップ

カクレ理系のやぶにらみ

tamm.exblog.jp

時間のある方はお読みください。軽い気持ちで読み始めると頭が痛くなります。

誰のための政党か? 民主党の危機管理能力

 鳩山総理と小沢幹事長という民主党のNo.1とNo.2に対する「政治とカネ」の疑惑の一連の経緯をみていると、この政党には危機管理能力というものがないと判断せざるを得ません。
 鳩山総理は国会で弁明しましたが、大衆がそれで納得しているかというとそうではありません。また、小沢幹事長にいたってはそれすらしていません。検察が嫌疑不十分で不起訴としたときに、これで私の無実潔白が証明されたというコメントを出してそれで終わりでした。
 企業が不祥事を起こし、マスコミに追求されるという事件はたびたび起こっています。その対応がまずければ、消費者の反感を買って不買運動を起こされたり、取引停止とされたりして、最悪の場合倒産や廃業に追い込まれた企業もあります。
 こうしたことから、企業では危機管理ということに真剣に取り組むようになったところが増えています。
 危機管理の鉄則は、事実をありのままに公表すること。その際に第三者を交えた調査委員会を設置して、問題点と責任の所在を明確にしたうえで、処罰を含め、再発防止策を講じるということです。厳しいようですが、そこまでしないと世間は納得してくれませんし、世間を敵に回したのでは商売ができないのです。
 ところが、このたびの民主党の対応はこの原則から悉くはずれています。政治は商売とは違いますが、政治家は選挙民の信任を受けなければならないわけですから、世間を敵に回すということは政治生命が絶たれるということに等しいのです。
 その証拠に、民主党の支持率は世論調査の度に低下しています。民主党が抱える問題はそのような現実を突きつけられているにもかかわらず、何ら有効な対策を講じることができないところにあるといえます。

 過去に、不祥事を起こし、その対応がまずかったために倒産や廃業に追い込まれた企業には共通点があるように思います。それは、その会社が経営者の私物であったという点です会社が経営者の私物であれば、誰もその人に逆らえなくなります。もちろん意見をすることもできません。下手に逆らおうものならばたちまち馘になるからです。
 そのような組織では、法や常識よりも経営者の意思の方が優先されるのはおわかりでしょう。実際にそういう会社は意外と多いのです。
 危機管理とは、個人ではなく組織を守るという発想に基づく行動ですから、社長の私物となっている企業とは相性が悪いのです。

 ここ数ヶ月の民主党の動きを見ていると、小沢幹事長の顔色を伺いながら仕事をしているように見受けられます。時折、渡部恒三最高顧問が批判的な意見を述べることがあっても悉く無視されています。また、原理主義者と揶揄されることがある岡田外務大臣でさえも小沢幹事長に対する批判を口にすることはありませんし、ただ一人の上司であるはずの鳩山総理に至っては小沢幹事長に遠慮しているのか、まるで上司らしさがありません。そのため、政府のトップは鳩山総理、民主党のトップは小沢幹事長という二重構造に陥っています。
 だからといって民主党が小沢幹事長の私物に成り下がっているというのは適当ではありませんが、もはや党内で自由な議論ができない組織になっていることは明かです。これが民間の組織であればどうなろうと構わないのですが、曲がりなりにも政府与党なのですから、失政が社会に与える影響は大きなものがあります。
 さらに懸念されるのが、危機管理能力のない政党が政権を握っていて、いざというときに適切な対応がとれるのかということです。緊急事態といっても過去に事例があり、対策についてのマニュアルが定まっているものについては心配ありません。ラインに任せておけばいいのであって、トップがすべきことは報告を受けるくらいのものです。
 しかし未知の事態、どのように対応したらいいのかという正解がないときはトップの出番となります。
 もちろん現場ではリーダーの立場にある人たちがそれぞれ適切な判断を下さなければならないのですが、明確な方針がない中でそれぞれ勝手に動くことになります(かといって指示を待っていたのでは手遅れになりかねない場合もあります)。このように指揮系統が定まらないまま動くと、情報が錯綜し、適切な対応ができないようになるので、混乱に拍車をかけます。
 勘のいい読者は、それってまるで普天間基地の移設先をめぐる政府の迷走のことじゃないかと思われるでしょう。普天間基地をめぐる混乱は、鳩山総理が衆議院選挙の際に沖縄を遊説して、軽々しく県外移設を約束してしまったことが発端です。そういう意味では自業自得なのですが、民主党の議員諸氏が結束してこの問題に取り込もうという動きが起こらないのも情けないといえます。
 このあたり、普段真剣に考えることをしていないという証拠であるといってもいいでしょう。
 危機管理能力を高める訓練は、普段から突き詰めて考えるということに尽きます。何も考えていないから、いざというときに頭の中が真っ白になって、パニックに陥るわけです。もっとも普段からきちんと考えていたら、普天間基地を県外移設させますなどと安請負することもなかったでしょう。日本の防衛は自力で行うという覚悟もないくせに、軽々しく約束するから混乱と不信を招くのです。

 たぶん、普段あまりものごとを考えていないだろうな、と思われる議員は自民党、公明党、社民党にもいます。そういう意味ではどの政党も五十歩百歩であるといえるので、民主党だけを責めるのは酷かもしれません。
 こういう議員が多くなったというのは、私たちが議員の活動について関心を持とうとしないことも原因のひとつとして数えることができます。議員について知らないとどうしても政党で投票することになります。その上、小選挙区制と比例代表制があるわけですから、組織票を確保した政党が有利になります。だから自民党は公明党と連立を組み続けたわけですし、小沢幹事長は連合の支持を取り付けたわけです。
 しかし、選挙で組織票を動員してもらった見返りに支持団体に対して便宜を図るかのような政治が行われるのであり、それらの財源は支持団体と無縁の一般市民が負担する税金が充てられるのですからたまったものではありません。
 政党はいったい誰のためにあるのかといえば、現在の日本では、一つは議員になりたいという政治家のためであり、もう一つはそれを支持する団体のためにあると指摘せざるを得ません。
 そのような状況下では、当選させたもらった議員の多くは陣笠となり、一部の人間に権力が集中することになってしまいます。
 有権者が政党に投票するという行動を改めない限り、この状況は変わりません。
by T_am | 2010-04-30 21:49 | その他

by T_am