世論調査というもの
桝添氏の支持率は29%で、2位の岡田外務大臣の9%を大きく引き離しています。それでは自民党支持率がその分伸びたのかといえば、前回20%だったのが今回は16%とさらに下がっています。
どうやら世論調査というのは、はっきりと物を言う政治家に人気が集中するようです。そういえば小泉純一郎も安倍晋三もそのタイプでした。
世論調査の質問項目である「総理にふさわしい人物は誰だと思いますか?」に関しては、いってみれば芸能人の人気投票のようなものだと思うのが実害がなくていいようです。
世論調査というタイトルがついているものですから、今の民意はこうなのか、と大げさに考えがちです。けれども、はっきりと物を言うというのはリーダーにとって必要な資質ですが、それがあれば誰でもリーダーになれるかというとそうではありません。
それでは、なぜはっきりと物を言うタイプの政治家が常に高い人気を集めるのでしょうか?
その理由として考えられるのは次の2つです。
第一に、はっきりと物を言うタイプの人であればこそ実行力が伴っているだろうと、つい期待してしまうこと。
第二に、私たちは政治家の能力や実績についてほとんど知らないということ。
政治家についてほとんど知らないからこそ表面的な部分だけで判断してしまうのはやむを得ないといえますが、そのことはきちんと理解しておいた方がいいと思います。
高い人気をもって総理大臣になったといえば、田中角栄、小泉純一郎、安倍晋三の三人に尽きると思います。やったことの善し悪しはともかくとして、前評判通りのことをしたといえば田中角栄くらいでしょう。小泉純一郎が提唱した構造改革(いわゆる小泉改革)も、最近ではすっかり否定されてしまいましたし、安倍晋三に至っては、総理就任後わずか一年で辞任するという醜態を晒しました。
では、今回トップになった舛添要一という人はどうかというと、この人はスタンドプレーの好きな人であるというのが私の印象です。このタイプの人は目の前の課題や問題をそつなくこなすことはできますが、より大局的に、では今後どのように進路をとったらいいのかという構想を立てるには不向きです。というのは、こうすればうけるということには敏感ですが、こうすればみんながしあわせになれるという発想ができないからです。そのために、自分が憎まれ役になるという気持ちがこれっぽっちもないのがこのタイプであって、結局自分のことしか考えていないのです。(こういう人はどこの会社にもいるでしょ。)
そうかといって、岡田さんが総理になれば堅苦しいと思いますし、前原さんがなればふらふらしそうで心許ないというのが正直なところです。
自民党の凋落というのは、小泉元総理以来、個人の人気に頼った政治をおこなってきたというのが直接の原因であろうと思います。そのように考えると、執行部は退陣してもっと若手を起用せよという意見も大同小異であるといえます。自民党を離党して新党を設立する人たちも同様です。(それにしても「たちあがれ日本」というのはアニメを連想させる名前ですね。)
政治家なんだから政策で勝負したらどうかと思うのですが、そういう声が若手からも長老からも出てこないところが、この政党が末期状態にあるということの証左であろうと思います。
自民党の支持率がさらに低下したというのは、このあたりの事情も影響しているのだと思います。
そうなると、世論調査というのは、国民が見限った政党や政治家はどれだ、というのを知るためにはいい材料であるといえるような気がします。
世論調査とは、しょせんその程度のものであると理解しておいた方がよいと思います。