人気ブログランキング | 話題のタグを見る
ブログトップ

カクレ理系のやぶにらみ

tamm.exblog.jp

時間のある方はお読みください。軽い気持ちで読み始めると頭が痛くなります。

これが日本語か?

 一昨日、ニュースを漁っていたら、なんだこれは? という見出しを見つけました。

北朝鮮、オバマ政権「妖術ろうしている」と非難に踏み切る(読売新聞 09.05.04 19:40)  
 「妖術ろうしている」とはどういう意味だろうと考えたのですが、結局わかりませんでした。そこで、記事を読んでみることにしました。以下はその記事の引用です。」

 朝鮮中央通信によると、北朝鮮外務省報道官は4日、弾道ミサイル発射を非難する国連安保理議長声明の採択に当たって、米国が「主導した」としてオバマ政権を非難した。
 北朝鮮はこれまで、「米朝対話」路線を掲げるオバマ大統領への批判を慎重に避けていた。
 報道官は「米国が我々の衛星発射を必死に弾道ミサイル発射だと強弁する政治的狙いは、何とか制裁の口実を作り、わが国の国防工業を物理的に窒息させることにある」と指摘。その上で、「米国の現政権は『変化』や『多国間協力外交』と騒ぎ立て、妖術を弄(ろう)しているが、気にくわない国々を力で圧殺しようとした前政権と少しも変わらない」と述べ、名指しは避けながらもオバマ政権を非難した。(以下略)

 なんと、「妖術ろうしている」とは「妖術を弄している」ということだったのですね。「策を弄する」といういい方があるように、「○○を弄する」というのが通常の用い方です。だから「を」省略するとわからなくなりますし、何よりもひらがなで書いているので余計わからなくなるのです。
 推察するに、新聞というのは親切にも、リテラシーが相当低い読者でも新聞を読むことができるようにという編集方針で、ちょっと難しい漢字には( )でくくってふりがなを表示してくれています。ところが、見出の場合字数制限があるのでふりがなをつけるだけの余裕がなかったものと見受けられます。
 それならそれで、もう少し違う言い回しがあると思うのですが、この新聞の編集者は、「妖術」といういささか時代がかった言葉を使いたかったものと思われます。北朝鮮の報道官が実際にこの言葉を用いたかどうかはわかりません。ニュースソースをあたっても、私には翻訳できないからです。因みに、このところを朝日新聞は「術策を弄している」と表現しており、産経新聞に至っては触れていません。だから、実際にどのような言葉が使われたのかはわからないのです。
 仮に、読売新聞の報道が正確であるとすれば、

 北朝鮮、オバマ政権が「妖術を弄(ろう)している」と非難

 とでもしておけばよっかたのに、と思わずにはいられません。今まで北朝鮮がオバマ政権に対する論評を控えてきたという背景を強調するために、「非難に踏み切る」という動きのある書き方をしたのかもしれませんが、欲張りすぎた結果、かえって意味が通じない見出しとなったのだと思います。
by T_am | 2009-05-06 06:04 | 言葉

by T_am