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カクレ理系のやぶにらみ

tamm.exblog.jp

時間のある方はお読みください。軽い気持ちで読み始めると頭が痛くなります。

政府高官と政府筋

 この間、政府高官の発言が物議を醸したと思ったら、今度は北朝鮮のミサイル迎撃に関する「政府筋の発言」が報道されました。ちなみに、政府高官も政府筋もともに官房副長官のことを指すのだそうです。前回の政府高官は漆間官房副長官でしたが、今回わざわざ「政府筋」と異なる表現をしているのは発言者が前回とは異なるということを示唆しているのかもしれません。
 北朝鮮が発射したミサイルを本当に迎撃できるかどうかは「やってみないとわからない」と見るのが正しいと思います。実験と実戦は違いますから、実験で成功しているからといって実戦でも成功するという保証はどこにもありません。
 したがって、この政府筋の発言はどなたのものかはわかりませんが、ことさら取り上げるほどのものではないと思います。むしろ、こういう発言をマスコミに対し行うというのは何か思惑があって話しているか、単なるバカかのどちらかです。前回の「政府高官」殿はどちらかというと思慮の浅い御仁であることがその後の報道で伝えられていました。トップがトップならば、幹部もそれに似てくるようです。このたびの「政府筋」殿がどちらのタイプなのかはまだわかりませんが、何らかの思惑があって発言したのではないかと勘ぐりたくなります。

 北朝鮮がミサイルを発射して、その迎撃に成功すれば、「わが国のこれまでの防衛方針に間違いはなかった。すぐ隣に何をしでかすかわからない危険な国があるのだから、今後の備えを万全にしておくに越したことはない」という声が興ってくることは確実です。仮に、失敗した場合でも「このように何をしでかすかわからない国がすぐ隣にあるのだから、より実効性の高い迎撃システムを構築しなければわが国の安全保障は望めない」とかなんとか理屈をこねて防衛費予算を増額させようとする動きが出てくることは容易に想像できます。どう転んでも軍事力の増強に結びつくことになると思います。
 NHKのニュースは次のように伝えています。
 http://www.nhk.or.jp/news/k10014927381000.html#

(前略)日本がミサイル防衛システムを作動させたとしても迎撃は不可能だという認識を示しました。そのうえで、この政府筋は「石破農林水産大臣が防衛大臣をしているときに、『ミサイル防衛システムは当たるのか』と聞いたら、『当たると思う』と答えたが、私は『当たらないだろ』と言った。憲法の解釈がどうなるとか、そういうことを延々やって、実際のことを何もやってこなかった、過去50年を反省するしかない。口を開けてみているしかない」と述べました。

 「政府筋」殿は、このことが言いたかったわけです(新聞記事はこの部分をカットしていました)。つまり、この人は、日本の軍事力を実効性のあるものにするために、今回のミサイル迎撃が失敗すればいいと強く望んでいるのです。自分の意見の正当性を立証したいと願うあまり、事態がより危機的な方向に推移することを願うというのはその人の人間性に欠陥があることを現しています。自分の職務に誠実な人であれば危機的状況に陥るのを何とかして回避しようと考えるのが当然だからです。率直に言って、この人は大久保彦左衛門みたいな人であると思いました。もっとも江戸時代の大久保彦左衛門は何の実権も持たない老人に過ぎなかったので、それだけ無害だったといえます。その点、現代の大久保彦左衛門氏はどうでしょうか?
 ついこの間、日本テレビの社長が辞任したばかりだというのに、あいかわらずこの国のマスコミは個人の発言をロクに吟味もせずに一斉に垂れ流すということを行っています。政府要人の発言ともなれば、確かに無視するわけにはいかないのでしょうが、新聞のように最後の部分をカットした報道の仕方では、どういう思惑で発言しているのかがよくわかりません。やはりニュースというのは色々と比較してみないとわからないものであるということが改めてわかりました。

 思うに、このオフレコ発言というのは、しょっちゅう行われているのでしょうね。マスコミはそれをニュースとして報道するかどうか判断して、たいていのものは没にしていると思われます。大スクープになる発言がいつもあるわけじゃなし、大半はたわいもない内容ではないか。 
 実をいうと、オフレコと称して、政府要人の発言を匿名で報道することに何の意味があるのか、私には未だに理解できません。個人の本音を聞き出しても、相手の思惑に乗せられるのがオチです(亡くなった金丸元自民党副総裁はこの名人でした)。ときには失言を引き出すこともあるでしょうが、それは揚げ足取りの材料になるだけです。敵の失点は自分の得点というのがわが国の政治家に共通した信念であり、議論よりも非難をした方が大衆受けするということをよく知っています。これではいつまで経ってもまともな議論の展開は望めません。
 政治の場合、政治家個人の感想よりも、責任のある立場の人としてどう判断しているのか、どう行動していくのかを伝えてもらった方がよほど有益です。記者の方が質問をする際には、それはなぜですか? ということを何度も繰り返していただきたい。そうすると深く考えていない政治家はたちどころに馬脚を現します。満天下に恥をさらすわけですから、そうならないよう緊張感が生まれることになります。
 仲良しクラブみたいな取材環境でつくられたニュースは退屈でなりません。
by T_am | 2009-03-25 06:05 | 社会との関わり

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