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カクレ理系のやぶにらみ

tamm.exblog.jp

時間のある方はお読みください。軽い気持ちで読み始めると頭が痛くなります。

親の心配と陥穽

 今回は、前回の「13歳の進路」とセットになっています。
 子どもの成長に伴って、親には心配事ができていきます。自分の子どもはよその子どもよりも成長が遅いのではないか? あるいは劣っているのではないか? という不安です。
 ただし、不安と安心は裏表の心理ですから、よその子どもよりも成長が早かったり、すぐれているところを見つけると、親は安心するというのも事実です。これはいい悪いではなく、親というものはそのように感じるものなのだということです。

 ですから親には、わが子の成長度合いをよその子どもと比較しがちなところがあります。よその子どもと比較して成長が早い分には安心するのですが、遅いとやはり気になるものです。たとえば、よその子に比べて、おしめがとれるのが遅い、言葉を話すのが遅いのではないか? 等々、心配事の種は尽きません。
 子どもが大きくなって学校へ行くようになると、親にとって今度はわが子の成績や運動能力が気になるようになり、ここでもほかの子どもとの比較が行われます。テストの点数が平均点よりも低いといっては心配し、順位が前回のテストよりも下がったといっては不安に駆られることになります。逆に、点数が平均よりも高かったり順位が上がれば、親は安心していられます。そして、いつも点数が平均よりも高く、順位が上の方にある場合、親はわが子を自慢に思うようになるのです。
 また、兄弟姉妹がいる家庭では、親は兄弟姉妹と比べて考える傾向があります。たとえば、兄はおっとりしているが弟の方は要領がいいとか、姉は人見知りするタイプだが妹の方は物怖じしない、というふうに。
 けれども、親によるこのような「品定め」は子どもにとって何ら益するところはありません。人間にとって一番嫌なことは他人と比較されるという形をとって自分を否定されることだからです。

 「○○さんちの△△ちゃんはこういうことができる。それに比べてあんたは・・・」

 親にすればれができるけれども、わが子を発奮させるつもりでこういっているのでしょうが、実際には逆効果です。自分が同じいわれ方をしたらどう思うかを考えてみればわかるでしょう?

 子どもが親に期待しているのは、自分を肯定してくれることであって、否定することではありません。ただし、肯定するだけでは子どもが間違った方向へ進むことがあるので、ときには叱ることによってこれを修正してやることも親の勤めです。

 わが子の個性を伸ばしてやりたいと考える親は多いと思います。
 しかし、口ではそういいながら、わが子をよその子と比べ、平均よりも優れていれば自慢に思い、劣っていれば心配するというのは矛盾しています。
 いいところも悪いところも含めてその子の「個性」なのですから、「個性」とか「自分らしさ」ということをいっても仕方ありません。むしろ、自分の力で生きていけるように育てることがもっとも大切なことです。その次に、人間は努力することによって自分自身を変えられるのだと教えること。ただし、これは必ずしも学校の成績のことをいっているわけではありません。自分の好きなこと、やりたいことに一生懸命打ち込むうちに、いつの間にか自分が変わっているというものです。
 どんなにかわいい子どもでも、親はその子が死ぬまで面倒をみることはできません。親の方が先にいなくなるというのが自然の摂理です。
 人間が幸せに生きていくためには、幸せを感じられるハードルを低く設定することが大切であって、そのためには、ささいなことでも嬉しいと感じられる感受性を持った方がいいのです。
 自分の子どもには幸せになってほしいと思わない親はいません。しかし、そこでいう「幸せ」とは親が考える「幸せ」であって、子どもが感じる「幸せ」と同じではありません。こうして考えていくと、親が思っている「子どものためにしている」というのは、実は「自分が納得するためにしている」場合もある、ということがわかります。
 人間とは敏感なもので、自分に向けられる愛情表現がどのようなものであるかをちゃんと感じ取ることができます。親が、自分はこれだけ愛情を注いでいると思っていても、それが実は「自分を納得させるため」の愛情表現に過ぎなければ、子どもはそれを疎ましいと感じます。その代わり、何も代償を求めない愛情(たとえば、赤ちゃんをあやしてやると自分も一緒になって楽しくなります)は必ず相手に伝わります。
 親がそのような愛情を子どもに注いでいる限り、子どもはいつかきっと親に感謝するようになります。別に、感謝されるために子どもを育てるわけではありませんが、他人に素直に感謝することのできる人間を育てるというのは尊いことであると思います。
by T_am | 2008-12-31 07:49 | 心の働き

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